百人一首第十二番 遍昭『天つ風』を情景と背景から完全解説で、
和歌の世界を旅してみませんか?
百人一首の世界は、
平安時代の風雅な情景と
感情が紡がれた宝庫です。
第十二番、遍昭の『天つ風』は、天上の風に雲を閉ざしてもらい、そして舞を舞う乙女の美しい姿を少しでも長く留めておきたいという願いを詠んだ一首です。

百人一首第十二番 遍昭『天つ風』を情景と背景から完全解説では、初心者の方にもわかりやすく、和歌の背景や楽しみ方を丁寧に解説していきます。

この和歌では、儚い美の瞬間を惜しむ心情が描かれています。一緒にその情景を紐解き、美の本質に触れてみましょう。
和歌の魅力をより深く理解するために、和歌と短歌の違いを学べる記事もぜひご覧ください。和歌の形式や表現の違いを学ぶことで、百人一首の味わいがより一層広がります。
また、百人一首の流れを追って楽しむことで、和歌の歴史や背景がより深く感じられます。前の歌をまだご覧になっていない方は、ぜひ百人一首第十一番 小野篁『わたの原』の記事も併せてご覧ください。
遍昭の生涯と百人一首の背景
生涯について


遍昭 – Wikipedia(816年ー890年)は
平安時代初期の僧侶であり、
六歌仙の一人。
俗名は良岑宗貞で、
嵯峨天皇の側近として仕えた後に
出家しました。

また美意識に優れ、繊細な恋愛や自然描写を詠んだ歌が多く、宮廷文化と仏教的思想の双方を反映した和歌が特徴です。
歴史的イベント
遍昭は嵯峨天皇に仕えた貴族として活躍し、
出家後は仁明天皇の時代に仏教の布教に
尽力しました。

また、平安時代初期の文化隆盛期に、六歌仙の一人として和歌を通じて貴族社会に多大な影響を与えました。

そして、その時代、宮廷における和歌の位置づけが重要視され、遍昭の作品も藤原文化の礎を築く一翼を担いました。
他の歌について
遍昭の和歌は『古今和歌集』
に多く収められています。
その中でも
「秋の野に なまめき立てる 女郎花
あなかしがまし 花も一時」は、
艶やかに咲き誇る女郎花を
女性にたとえた一首です。

この和歌では、秋の野原に華やかに競い合う姿を「まあ、なんとうるさいことか」と皮肉混じりに詠みつつ、そんな美しさも儚く短いものであると暗示しています。

そして、美の一瞬の輝きと、それに伴う儚さを描き、自然と人間の美の本質に迫った深い洞察が込められています。
百人一首における位置付け
遍昭の「天つ風」は、
六歌仙の一人としての優雅な感性と
宮廷文化を反映した一首です。
また舞を舞う女性の美しさを惜しむ心情を
天上の風や雲に託し、
自然と人間の調和を表現しています。
そして百人一首の中でも
美意識の象徴的な作品です。
遍昭がなぜこの和歌を詠んだのか?
百人一首第十二番 遍昭『天つ風』を情景と背景から完全解説では、遍昭がなぜこの和歌を詠んだのか?についてポイントを3つに分けてみました。
- 舞う女性の美しさへの感動
- 自然を媒介とした願い
- 平安時代の美意識の象徴
舞う女性の美しさへの感動
宮廷で舞を舞う女性の
優雅な姿に心を奪われ、
その美しさを少しでも長く目に
焼き付けておきたいという
感情が込められています。
自然を媒介とした願い
天の風や雲を擬人化し、
その通り道を閉じるように願うことで、
美の一瞬を永遠に留めたいという
願望を表現しています。
平安時代の美意識の象徴
限られた時間でしか味わえない
美しさを惜しむ感覚は、
平安時代特有の美意識であり、
それがこの和歌の根底にあります。

また遍昭は舞う女性の美しさを目にし、その儚さを惜しむ感情を天の風や雲に託しました。

そして「しばし留めてほしい」と願う心は、ただの感嘆ではなく、一瞬の美を慈しむ平安貴族特有の繊細な感性を伝えています。
この和歌は、平安時代の宮廷文化における美意識を象徴しています。
読み方と句意


百人一首 十二番 遍昭
歌:天つ風 雲の通ひ路 吹き閉ぢよ 乙女の姿 しばしとどめむ
読み:あまつかぜ くものかよひぢ ふきとぢよ をとめのすがた しばしとどめむ
句意:この歌では、「天を吹く風よ、雲の通り道を閉ざしておくれ。舞を舞う美しい乙女の姿を、もう少しだけこの場に留めておきたいのだ。」と歌っています。
この和歌の楽しみ方
百人一首第十二番 遍昭『天つ風』を情景と背景から完全解説では、この和歌の楽しみ方のポイントをこの3つに分けてみました。
- 天と地の調和を感じる
- 美しさの儚さを味わう
- 風や雲の擬人化に注目
天と地の調和を感じる
天の風や雲という広大な自然と、
舞う乙女という人間の美しさが
交錯する情景に注目しましょう。
また自然の壮大さが、
儚い美をさらに引き立てています。
天の風や雲を擬人化することで、広大な自然と人間の美が調和する情景が描かれています。また壮大な自然の中に人間の儚い美が映える瞬間を想像すると、より深い感動が得られるでしょう。
美しさの儚さを味わう
乙女の舞う姿が、
刻一刻と過ぎ去る瞬間の美を
象徴しています。
その一瞬を惜しむ心情に
共感してみましょう。
平安時代特有の美意識である「もののあはれ」が詰まった一首です。刻々と消え去る美しい瞬間を惜しむ感情が表現されており、その感性に触れることで和歌の深みを楽しめます。
風や雲の擬人化に注目
天の風や雲に願いを託す表現は、
平安時代ならではの感性です。
自然と人間が交わる独特の描写に
目を向けてみてください。
風や雲に願いをかけることで、自然が単なる背景ではなく、物語の一部として動いているように感じられます。またこの擬人化表現は、平安時代の和歌ならではの魅力です。
百人一首第十二番『天つ風』の情景と解説
上の句(5-7-5)
上の句「天つ風 雲の通ひ路 吹き閉ぢよ」では、
天を吹く風に語りかけ、
雲が行き交う通り道を閉ざしてほしいと
願う情景が描かれています。
自然と人間が織りなす瞬間を詠み、
壮大な自然の中に儚い願望が
浮かび上がります。
五音句の情景と意味 「天つ風」


「天つ風」では、天を吹く風に向けて語りかける様子が描かれています。また天上から吹き降ろす風が、広大な空の情景を連想させます。
七音句の情景と意味 「雲の通ひ路」


「雲の通ひ路」では、雲が天上を通る通り道が目に浮かびます。また流れる雲が、空の広がりと自然の動きを象徴しています。
五音句の情景と意味 「吹き閉ぢよ」


「吹き閉ぢよ」では、雲の通り道を閉ざしてほしいと願う言葉が、自然の力への儚い願望を表現しています。
下の句(7-7)分析
下の句「乙女の姿 しばしとどめむ」では、
舞う乙女の美しい姿を、
風や雲に託して少しでも留めてほしいと
願う情景が詠まれています。
そして儚くも美しい一瞬を惜しむ
感情が表現され、
平安時代特有の繊細な美意識が
込められています。
七音句の情景と意味 「乙女の姿」


「乙女の姿」では、優雅に舞う乙女の姿が描かれています。またその美しさが一瞬で消えてしまいそうな、儚さと輝きを感じさせます。
七音句の情景と意味 「しばしとどめむ」


「しばしとどめむ」では、乙女の舞う姿を少しでも留めたいという切なる願いが込められています。そして時の流れを惜しむ心情が伝わります。
和歌全体の情景


和歌全体では、天上を吹く風に語りかけ、雲の通り道を閉ざしてもらうことで、舞う乙女の美しい姿を少しでも長く留めたいと願う情景が描かれています。また自然と人間の調和が繊細に表現され、儚い美の瞬間を惜しむ心情が伝わります。平安時代特有の美意識が光る一首です。
まとめ
遍昭の「天つ風」は、
天上を吹く風や流れる雲に語りかけ、
美しい乙女の舞う姿を少しでも
長く留めたいと願う一首です。
風や雲を擬人化し、
自然を媒介にした願望を詠むことで、
時の流れや美の移ろいを
深く感じさせます。
限られた時間の中で輝く美しさに
心を奪われる瞬間が、
今もなお人々の心を動かす
和歌の魅力となっています。

この和歌には、自然と人間の美しさが巧みに調和しており、一瞬の儚い美を惜しむ平安時代の繊細な感性が表現されています。

百人一首第十二番 遍昭『天つ風』を情景と背景から完全解説を百人一首の第一歩として、この和歌を味わうことで、和歌の魅力を発見してみてください。