百人一首第三十一番 坂上是則『朝ぼらけ』を情景と背景から完全解説で、
和歌の世界を旅してみませんか?
百人一首には、四季折々の風情を詠んだ
美しい和歌が数多く収められています。
今回ご紹介するのは、第三十一番『朝ぼらけ』。冬の吉野の里を舞台に、白雪と有明の月が織りなす幻想的な情景を描いた一首です。

百人一首第三十一番 坂上是則『朝ぼらけ』を情景と背景から完全解説では、初心者の方にもわかりやすく、和歌の背景や楽しみ方を丁寧に解説していきます。

この和歌が持つ情景の魅力と、その背景に込められた詠み手の心情をひも解きながら、百人一首の世界をより深く味わってみませんか?
和歌の魅力をより深く理解するために、和歌と短歌の違いを学べる記事もぜひご覧ください。和歌の形式や表現の違いを学ぶことで、百人一首の味わいがより一層広がります。
また、百人一首の流れを追って楽しむことで、和歌の歴史や背景がより深く感じられます。前の歌をまだご覧になっていない方は、ぜひ百人一首第三十番 壬生忠岑『有明の』の記事も併せてご覧ください。
坂上是則の生涯と百人一首の背景
生涯について


坂上是則 – Wikipedia(生年不詳~930年)は、
平安時代中期の貴族・歌人であり、
三十六歌仙の一人として知られています。
また征夷大将軍・坂上田村麻呂の子孫とされ、
父は坂上好蔭です。

官位は従五位下・加賀介にまで昇進しました。
歴史的イベント
彼の和歌は『古今和歌集』や『後撰和歌集』などの
勅撰和歌集に約40首が収められており、

また、蹴鞠の名手としても知られ、醍醐天皇の前で206回連続で蹴り上げ、絹を賜った逸話があります。
他の歌について
坂上是則の和歌は、自然の移ろいと人生の儚さを
巧みに結びつけたものが多く見られます。
そして『後撰和歌集』に収められた
「桜花 けふよく見てむ 呉竹の ひとよのほどに 散りもこそすれ」は、
その代表的な一首です。

この歌では、桜の花が呉竹のように一夜のうちに散ってしまうかもしれないと詠み、桜の美しさを愛でつつも、その儚さを強調しています。

これは「今この瞬間を大切にする」という意識を表しており、彼の他の和歌にも通じるテーマです。
百人一首における位置付け
坂上是則の和歌は、自然の情景を巧みに詠み込み、
感動を呼び起こす表現が特徴です。
百人一首第三十一番の「朝ぼらけ」では、
夜明けの有明の月と降り積もる白雪を
見間違えるほどの光景を詠んだ一首であり、
視覚的な美しさと冬の静寂を際立たせる
表現力が評価されています。
坂上是則がなぜこの和歌を詠んだのか?
百人一首第三十一番 坂上是則『朝ぼらけ』を情景と背景から完全解説では、坂上是則がなぜこの和歌を詠んだのか?についてポイントを3つに分けてみました。
- 夜明けの幻想的な情景の感動
- 視覚的な対比の妙を表現
- 四季の風情を詠み込む伝統的な技法
夜明けの幻想的な情景の感動
坂上是則は、吉野の里で夜明けを
迎えた際に目にした光景に感動し、
この和歌を詠みました。
そして夜明けの淡い光に照らされた雪が、
有明の月と見紛うほどに美しく輝く様子を表現し、
自然の神秘的な美しさを詠み込んでいます。
視覚的な対比の妙を表現
この歌では、「有明の月」と「降り積もる白雪」という
二つの白いものを対比させることで、
幻想的な錯覚を描写しています。
夜明けのわずかな光の中では、
月と雪の境界が曖昧になり、
どちらがどちらか分からないという
美しい錯覚が生まれます。
このような視覚的な表現の妙を詠むことが目的でした。
四季の風情を詠み込む伝統的な技法
和歌の世界では、季節の移ろいを巧みに
詠むことが重視されます。
特に冬の和歌では、雪や月を用いて静けさや
厳しさを表現することが多く、
本歌もその一つです。
また冬の寒さと吉野の風情を伝えるために、
坂上是則はこの和歌を詠んだと考えられます。

この和歌は、夜明けの美しい自然の光景と、視覚的な錯覚を詠んだ作品です。

坂上是則は、このような冬の風情を詠み込むことで、自然の持つ奥深い魅力を表現しようとしたのでしょう。
「有明の月」と「白雪」という二つの白いものを重ね合わせることで、幻想的な情景を生み出しています。またこれは単なる風景描写にとどまらず、移ろいゆく時間や、自然の神秘的な力を感じさせる一首です。
読み方と句意


百人一首 坂上是則
歌:朝ぼらけ 有明の月と 見るまでに 吉野の里に 降れる白雪
読み:あさぼらけ ありあけのつきと みるまでに よしののさとに ふれるしらゆき
句意:夜明けの薄明かりに照らされた雪が、有明の月と見間違うほど白く輝いている。吉野の里に降り積もる雪の美しさを詠んだ和歌。
この和歌の楽しみ方
百人一首第三十一番 坂上是則『朝ぼらけ』を情景と背景から完全解説では、この和歌の楽しみ方のポイントをこの3つに分けてみました。
- 自然の美しさを感じる
- 視覚的な錯覚を楽しむ
- 季節の移ろいを感じる
自然の美しさを感じる
夜明けの薄明かりと有明の月が
織りなす幻想的な情景が魅力です。
雪が静かに降り積もる吉野の里を思い浮かべながら読むと、和歌の情緒が一層深まります。
視覚的な錯覚を楽しむ
雪が有明の月と見間違うほど
白く輝くという表現は、
光と影の対比が生み出す
幻想的な美しさを描いています。
この和歌を通して、自然の不思議な現象を楽しめます。
季節の移ろいを感じる
冬の夜明けの静けさと、
雪の白さが際立つ景色を想像すると、
冬特有の清らかな空気が伝わります。
季節の変化を感じながら読むと、和歌の趣をより深く味わうことができます。
百人一首第三十一番『朝ぼらけ』の情景と解説
上の句(5-7-5)
上の句「朝ぼらけ 有明の月と 見るまでに」では、
夜明けの薄明かりが広がる時間帯、
空にはまだ有明の月が残っています。
しかし、その月と見間違うほど白く輝くものがある
――それは、吉野の里に降り積もる雪でした。
そして月明かりと雪の光が溶け合い、
幻想的な冬の朝の風景が広がっています。
五音句の情景と意味 「朝ぼらけ」


「朝ぼらけ」では、夜明けのほのかな光が広がる時間を指します。また闇が薄れゆく中、静けさに包まれながら白み始める空が、幻想的な雰囲気を漂わせています。
七音句の情景と意味 「有明の月と」


「有明の月と」では、夜が明けても空に残る有明の月を指しています。また淡く光るその姿が、夜の名残を映しながら、静かな冬の朝を優しく照らしています。
五音句の情景と意味 「見るまでに」


「見るまでに」では、白く輝く雪を、まるで月と見間違えるほどの美しさと表現しています。また目の前に広がる光景が、錯覚を生むほど鮮やかに映ります。
下の句(7-7)分析
下の句「吉野の里に 降れる白雪」では、
吉野の山里に、しんしんと降り積もる雪。
その白さが月光と溶け合い、
幻想的な光景を生み出しています。
まるで夢の中の風景のように、
静けさの中で雪が優しく降り続いています。
七音句の情景と意味「吉野の里に」


「吉野の里に」では、深い山々に囲まれた吉野の静寂な風景が広がります。また冬の冷たい空気の中、凛とした自然の美しさが際立ちます。
七音句の情景と意味「降れる白雪」


「降れる白雪」では、空からしんしんと降り続く雪が、静かな山里を白く包み込む情景が描かれています。そしてその美しさは、まるで月の光を映したかのようです。
和歌全体の情景


和歌全体では、夜が明ける頃、有明の月が空に淡く残り、その光が辺りを照らしています。しかし、あたり一面を覆う白雪がその光と溶け合い、どちらが月の光なのか雪の輝きなのか見分けがつかないほどの景色が広がります。そして静寂の中、白銀の世界が浮かび上がり、雪と月の繊細な輝きが調和する、幻想的で美しい冬の朝の情景を描いています。
まとめ
この和歌は、冬の吉野の山里に広がる
幻想的な光景を詠んでいます。
夜明けの薄明かりの中、有明の月が空に淡く残り、
雪景色を照らします。
しかし、その光と降り積もる白雪が溶け合い、
まるで月の輝きと見間違えるほどの
美しさを生み出しています。

雪と月の繊細な輝きが調和し、静寂に包まれた冬の朝の風景が鮮やかに描かれた、視覚的な美しさが際立つ一首です。

百人一首第三十一番 坂上是則『朝ぼらけ』を情景と背景から完全解説を百人一首の第一歩として、この和歌を味わうことで、和歌の魅力を発見してみてください。