百人一首第82番 藤原敦頼『思ひわび』で、
和歌の世界を旅してみませんか?
藤原敦頼の「思ひわび」は、
恋の苦しみに耐える心と、
こぼれ落ちる涙の哀しみを詠んだ一首です。

たとえ心が憂いに沈もうとも、命はまだ続いていく。その中で流れる涙こそ、人の心のやさしさと儚さを映すもの。

静けさの中に深い情が宿る、平安恋歌の真髄を感じてみましょう。
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前回は、ほととぎすの声と月の光に余情を託した、徳大寺実定の一首をたどりました。夜の静けさに残るその響きが、恋の嘆きへと姿を変えていきます。
藤原敦頼の生涯と百人一首の背景
生涯について


藤原敦頼 Wikipedia(1090年~1182年頃)は、
藤原北家勧修寺流出身の貴族・歌人。
治部丞・藤原清孝の子として生まれ、
宮廷で右馬助などを務めました。
晩年には出家して道因と号し、
和歌に生涯を捧げました。

百人一首に採られた「思ひわび…」は、耐え難い恋の苦しみと涙を歌った代表作として知られています。
歴史的イベント
敦頼は承安2年に出家し道因法師となり、
80歳を超えてなお歌道に専心しました。
また晩年も毎月京都から
大阪・住吉大社への参詣を続け、
歌会にも活発に参加。

そして『千載和歌集』などに多くの作品を入集させ、平安末期から鎌倉初期の歌壇にその名を刻みました。
他の歌について
藤原敦頼は『新古今和歌集』に、
「山のはに雲のよこぎる宵のまは出でても月ぞなほ待たれける」
という歌を残しています。
この歌は、雲に隠れた月を待ち続ける心を通して、
焦がれる思いと忍耐の美を詠んだ一首です。

藤原敦頼は、自然の情景の中に人の心を重ねる表現を得意とし、恋の切なさや待つ心の静かな強さを描き出しました。

百人一首の「思ひわび」と同じく、見えないものを思い続ける、内に秘めた情熱と哀しみの調べが響いています。
百人一首第82番 藤原敦頼『思ひわび』百人一首における位置付け
この和歌は、
恋の苦しみに耐える人の心の弱さと強さを
描いた平安末期の代表的恋歌です。
涙によってしか表せない悲しみを詠み、
静かな絶望と人の情の深さを伝えています。
百人一首では、恋の終章にあたる
「嘆きと受容」の一首として
位置づけられています。
藤原敦頼がなぜこの和歌を詠んだのか?
百人一首第82番 藤原敦頼『思ひわび』背景解説–堪へぬ想いでは、藤原敦頼がなぜこの和歌を詠んだのか?についてポイントを3つに分けてみました。
- 恋の苦しみを吐露するため
- 涙の意味を見つめるため
- 生の儚さを感じ取るため
恋の苦しみを吐露するため
相手に想いが届かず、
心が疲れ果てた姿を詠んでいます。
それでも命が続く矛盾の痛みが、
この歌の根底にあります。
涙の意味を見つめるため
涙は悲しみの象徴でありながら、
心を洗い癒す存在でもあります。
また敦頼は、涙を人の感情の浄化として
描いたのです。
生の儚さを感じ取るため
苦しみに耐えながらも生き続ける――
そこに、人生そのものの無常と人の強さを
見出しています。

この和歌は、恋の嘆きという枠を超えて、人が生きる意味を問う一首です。

また思い悩み、涙を流しながらも命は続いていく。その事実を受け入れることで、人は静かに強くなっていく――
敦頼は、悲しみを否定せず、涙を通して心の救いを見いだす平安的な情感美を描きました。
読み方と句意


百人一首 第 藤原敦頼 ※百人一首では道因法師
歌:思ひわび さても命は あるものを 憂きに堪へぬは 涙なりけり
読み:おもひわび さてもいのちは あるものを うきにたへぬは なみだなりけり
句意:この和歌では、恋の苦しみに心が耐えられず、涙ばかりがあふれてしまう。それでも命だけは、まだ続いているのだという嘆きを詠んでいます。
「堪へぬ想い」――いまの私たちなら、どう感じるのだろう?
誰かを想いながらも、届かない気持ちに胸が締めつけられる。心に溜めた言葉が涙になる瞬間。そして藤原敦頼のこの歌は、生きる苦しみや孤独の中にある“優しさ”を、今を生きる私たちにも静かに伝えてくれます。
- 涙に託す心の声
- 苦しみの中で生きる
- 涙のあとに見える希望
涙に託す心の声
敦頼は、涙を「弱さ」ではなく
「心の真実」として描きました。
人は苦しみを抱えながらも、
その痛みを通して他者への共感を知ります。
また現代でも、
悲しみの涙は人と人をつなぐ優しいしるし。
そして涙の中にこそ、心の強さとぬくもりが
息づいているのです。
言葉にできない想いを、涙がそっと語ってくれます。
苦しみの中で生きる
「さても命はあるものを」という言葉には、
悲しみと同時に“生きる力”が込められています。
また苦しみながらも息をしていること、
それ自体が尊い。
そして敦頼は、
耐えながらも生きる姿に人間の美しさを見ました。
現代の私たちにも通じる、
静かな強さのメッセージです。
絶望の中でも、命は静かに続いていく――その事実が希望です。
言えない想いの美しさ
平安の恋は、声にできない想いを
「詩」に託す文化でした。
また敦頼の歌も、
沈黙の中に宿る感情の美を描いています。
そして現代でも、
言葉にしない優しさや思いやりは
確かに存在します。
“沈黙の愛”の尊さを感じるとき、
この歌の心にふれるでしょう。
伝えられない想いがあるからこそ、人は深く感じ、成長します。
百人一首第82番 藤原敦頼『思ひわび』の楽しみ方
百人一首第82番 藤原敦頼『思ひわび』背景解説–堪へぬ想いでは、この和歌の楽しみ方のポイントをこの3つに分けてみました。
- 涙の情景を感じる
- 言葉の静けさを味わう
- “生きる”という余韻を読む
涙の情景を感じる
「憂きに堪へぬは涙なりけり」――この一節は、
悲しみの中でこぼれる涙を静かに描きます。
また涙は心の弱さではなく、
耐えることをやめた瞬間にあふれる人間の真実。
そして読むたびに、
悲しみを受け入れる強さと
優しさを感じ取ることができます。
この和歌の鍵は「涙」。涙がどのように心の痛みや救いを映しているのかを味わいましょう。
言葉の静けさを味わう
敦頼は、嘆きを叫ぶのではなく、
静かに心を沈めて詠むことで感情の深さ
を伝えています。
またこの静けさの中にこそ、
深い余韻が生まれます。
そして声に出して読むと、
言葉の穏やかな響きが心を包み、
まるで涙が静かに落ちるような
感覚を味わえます。
激しい感情を直接語らない、平安歌人らしい抑制の美を感じましょう。
“生きる”という余韻を読む
「命はあるものを」と詠む敦頼の言葉には、
悲しみの中にも生きる意志が
込められています。
また絶望と希望のあわいを漂うこの和歌は、
読む人の心に静かな灯をともします。
そして苦しみながらも生きることの尊さ―
それを感じることこそ、
この歌の最大の味わいです。
苦しみの中にも続いていく命へのまなざしを感じてみましょう。
百人一首第82番 藤原敦頼『思ひわび』背景解説
上の句(5-7-5)
上の句「思ひわび さても命は あるものを」では、
恋の苦しみに心が沈みながらも、
まだ命が続いているという
矛盾した生の痛みを詠んでいます。
また深い絶望の中にあっても息づく命の儚さ――
敦頼はその静かな苦しみを、
淡々とした言葉で表しました。
五音句の情景と意味「思ひわび」


「思ひわび」では、恋の苦しみに心をすり減らし、想いの重さに耐えかねる切ない心情を映しています。
七音句の情景と意味「さても命は」


「さても命は」では、どれほど辛くても、命だけは続いていく。生の痛みと儚さの中にある、静かな諦念を表します。
五音句の情景と意味「あるものを」


「あるものを」では、まだ生きているという現実に、悲しみとわずかな希望が入り混じる余韻を感じさせます。
下の句(7-7)分析
下の句「憂きに堪へぬは 涙なりけり」では、
苦しみに耐えながらも、
こらえきれず流れ落ちる涙の情景を描きます。
敦頼は、涙を弱さではなく
心が生きている証としての“人の真実”
として詠みました。
静かな絶望の中にも、
人間らしい温かさがにじんでいます。
七音句の情景と意味「憂きに堪へぬは」


「憂きに堪へぬは」では、恋の悲しみと人生の苦しみに、心が押しつぶされるほどの痛みを感じています。
七音句の情景と意味「涙なりけり」


「涙なりけり」では、こらえきれぬ想いが形となってこぼれ落ちる。涙こそが心の真実を語るものとして描かれています。
百人一首第82番 藤原敦頼『思ひわび』和歌全体の情景


恋の苦しみに心が沈み、思い悩む日々。それでも命は続き、涙だけがその痛みを語ってくれる。夜の静けさの中、ひとり涙を流す姿には、絶望と生の狭間にある人の儚さが滲みます。藤原敦頼は、涙という静かな感情の声を通して、心の深い真実を詠み上げました。
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恋の苦しみを涙に託した藤原敦頼の歌をたどったあとは、
世の無常を見つめ、道なき嘆きを詠んだ藤原俊成の一首へと進みましょう。
👉百人一首第83番 藤原俊成『世の中よ』背景解説–道なき嘆き
百人一首第82番 藤原敦頼『思ひわび』まとめ
藤原敦頼の「思ひわび」は、
恋の苦しみを通して人の生の儚さを
詠んだ一首です。
また思い悩みながらも命は続き、
こらえきれず流れる涙が心の真実を語ります。
そして敦頼は、
涙を弱さではなく“生きる証”として描いた点で、
平安恋歌の中でも異彩を放ちます。

静けさの中にある感情の深み、そして苦しみの奥に宿る優しさ――。この和歌は、今を生きる私たちにも“涙の意味”を問いかけてくれる作品です。

百人一首第82番 藤原敦頼『思ひわび』背景解説–堪へぬ想いを百人一首の第一歩として、この和歌を味わうことで、和歌の魅力を発見してみてください。



