百人一首第85番 俊恵『夜もすがら』で、
和歌の世界を旅してみませんか?
恋の思いに沈む夜ほど、
時間はゆっくりと流れ、
明け方さえ遠く感じられるものです。

俊恵の「夜もすがら」は、眠れぬまま迎える長い夜と、相手のつれなさを静かな情緒の中に描いた一首。

胸にしみる恋の余韻を、そっとたどってみませんか。
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前回の記事では、第84番・藤原清輔『長らへば』を解説しています。
時間が苦しみをやわらげ、懐かしさへ変わる心の歌です。あわせて読むと、恋の情感の流れがより深く味わえます。
俊恵の生涯と百人一首の背景
生涯について


幼くして僧侶となり、東大寺に入ります。
17歳で父を失い仏門に入りましたが、
40代ごろから再び和歌を始め、
また自坊を「歌林苑」と名付け、
歌人たちを招いて歌会や歌合を主催。

さらに平安末期の歌壇において、中世的な静けさと情感を備えた歌風で評価され、約千百首の歌を残しました。
歴史的イベント
平安時代末期、
社会が政変と武士台頭へと揺らぐ中、
俊恵は歌人たちと集い、
また歌林苑で歌合を催し、
文化の拠点となりました。

特に、和歌理論書『無名抄』に自身の言説が引用され、後世の歌論に影響を与えたことは大きな意義です。

さらにこうした活動は、王朝和歌から中世和歌への過渡期に、詩歌文化の継承と刷新を支えました。
他の歌について
俊恵は『千載和歌集』に、
「けふ見れば嵐の山は大井川もみぢ吹きおろす名にこそありけれ」
という歌を残しています。
この歌は、俊恵法師の代表的な冬歌で、
嵐山の名にふさわしく紅葉が風に吹き散る情景を
鮮やかに描いた一首です。

また自然の動きに心の感情を重ねる俊恵の特徴がよく表れ、静と動が交錯する中世和歌の美しさを感じさせます。
百人一首第85番 俊恵『夜もすがら』百人一首における位置付け
俊恵の「夜もすがら」は、
恋の思いに沈む長い夜を
静かな余情で描いた一首です。
百人一首では、
恋の成就から別離へと移る流れの中に置かれ、
また相手のつれなさに胸を痛める
“後朝の恋”の典型として、
夜の孤独と切なさを象徴する
歌と位置付けられています。
俊恵がなぜこの和歌を詠んだのか?
百人一首第85番 俊恵『夜もすがら』背景解説–つれなき夜更けでは、俊恵がなぜこの和歌を詠んだのか?についてポイントを3つに分けてみました。
- 眠れぬ夜に沈む心
- 相手のつれなさへの嘆き
- 恋が生む孤独の実感
眠れぬ夜に沈む心
恋の思いが募るほど、夜は長く、
静けさは心に重くのしかかります。
また俊恵は、明け方さえ
遠く感じるほどの切ない夜の時間を、
自らの感情に寄り添いながら
詠んでいます。
相手のつれなさへの嘆き
心は強く相手を想っているのに、
その思いに応えてくれない
“つれなさ”が胸に残ります。
また閨のひまさえ
冷たく感じられるほど、
片思いの痛みと孤独が深く
沁みているのです。
恋が生む孤独の実感
恋は喜びを与える一方で、
時に誰よりも深い孤独をもたらします。
また俊恵は、暗い部屋にひとり
座るような静けさの中で、
心が置き去りになる感覚を
素直に歌っています。

この和歌では、愛しい人への思いが強いほど、夜が果てしなく長く感じられる心の痛みを描いています。

また明け方が来ないように思えるのは、気持ちに応えてくれない相手へのつれなさが深く沁みているから。
俊恵は、恋の苦しさと孤独を、静かな夜の情景の中にそっと溶け込ませたのです。
読み方と句意


百人一首 第 俊恵 ※百人一首では俊恵法師
歌:夜もすがら 物思ふころは 明けやらで 閨のひまさへ つれなかりけり
読み:よもすがら ものおもふころは あけやらで ねやのひまさへ つれなかりけり
句意:この和歌では、恋の思いに沈む夜が明けず、相手のつれなさを感じながら、ひとり眠れぬ切なさが詠まれています。
「つれなき夜更け」――いまの私たちなら、どう感じるのだろう?
誰かを想いながら眠れない夜、返事の来ないまま過ぎていく時間、胸の中だけが静かにざわめく瞬間――。「つれなき夜更け」には、孤独・期待・諦めが揺れ動く私たちの気持ちが映っています。
- 返事を待ちながら過ぎる夜
- 気持ちに応えてくれない痛み
- ひとりの夜に押しよせる孤独
返事を待ちながら過ぎる夜
スマホの通知を気にしながら、
相手の言葉を待ち続ける夜があります。
また返事がないだけで胸がざわつき、
静かなはずの夜がとても長く感じられる。
恋の切なさは今も昔も変わらず、待つ時間が心をいちばん揺らすものなのです。
気持ちに応えてくれない痛み
自分は強く想っているのに、
その思いが相手に届かないとき、
心はそっと冷えていきます。
また既読のまま返ってこない言葉、
距離を置かれているような沈黙――。
どこか“つれなさ”を感じる瞬間が、胸の奥に静かな痛みを残します。
ひとりの夜に押しよせる孤独
日中は慌ただしくても、
夜になると急に心が静まり、
ふと一人の孤独が
押しよせることがあります。
また誰にも言えない気持ちが積もり、
小さなため息だけがこぼれる。
そんな夜ほど、自分の本当の想いが姿を現す時間になるのです。
百人一首第85番 俊恵『夜もすがら』の楽しみ方
百人一首第85番 俊恵『夜もすがら』背景解説–つれなき夜更けでは、この和歌の楽しみ方のポイントをこの3つに分けてみました。
- 長い夜の感覚を味わう
- 恋のつれなさに潜む感情を読む
- 夜の静寂と心の揺れを重ねる
長い夜の感覚を味わう
この和歌は、物思いに沈む夜が
どれほど長く感じられるかを、
静かな調べの中で表現しています。
また夜という時間は、
自分の心と向き合うには
十分すぎるほど深く、
その静寂がかえって胸を
締めつけることもあります。
読みながら、“明けない夜”のゆったりとした時間の流れをそっと感じてみるのが楽しみ方の一つです。
恋のつれなさに潜む感情を読む
「つれなかりけり」という言葉には、
恋しい相手の冷たさだけでなく、
自分でもどうしようもない
切なさが含まれています。
また気持ちに応えてもらえない痛みは、
いつの時代も誰かの心に
ひっそり寄り添うもの。
その“届かない想い”を感じながら読むと、歌の奥に流れる柔らかな悲しみの色が見えてきます。
夜の静寂と心の揺れを重ねる
俊恵の歌は、
夜という空間の静けさを背景に、
心の中で揺れる微細な感情を
繊細に描いています。
また閨(ねや)のひまの冷たさは、
ただの空間ではなく、
心の孤独そのもの。
光のない部屋にたたずむような静けさの中で、“心の温度が変わっていく瞬間”を味わうように読むと、この歌の余情がいっそう深まります。
百人一首第85番 俊恵『夜もすがら』背景解説
上の句(5-7-5)
上の句「夜もすがら 物思ふころは 明けやらで」では、
恋の思いに沈むあまり、
夜が果てしなく続くように
感じられる心情が描かれています。
また物思いが深まるほど時間はゆっくりと流れ、
夜明けさえ遠く感じられる切なさが
静かに広がります。
五音句の情景と意味「夜もすがら」


「夜もすがら」では、一晩じゅう眠れず、静かな闇の中でひとり思いに沈む。そして終わりの見えない長い夜がしんと広がっています。
七音句の情景と意味「物思ふころは」


「物思ふころは」では、心にさまざまな想いが満ち、胸の奥がざわめくような時間。そして恋の悩みが静かに深まっていく瞬間が描かれます。
五音句の情景と意味「明けやらで」


「明けやらで」では、夜明けが来ないように思えるほど、時間がゆっくりと流れる。そして恋の切なさが夜を引き延ばす情景がにじんでいます。
下の句(7-7)分析
下の句「閨のひまさへ つれなかりけり」では、
恋しい相手に思いが届かず、
部屋の静けささえ冷たく
感じられる心情が描かれています。
また応えられない恋のつれなさが、
夜の闇と閨の空虚さに重なり、
そしていっそう孤独を深める
情景となっています。
七音句の情景と意味「閨のひまさへ」


「閨のひまさへ」では、ひとり横たわる寝室の静けさが、かえって心に冷たくしみてくる。そして空気の隙間さえ寂しさを映す閨の情景です。
七音句の情景と意味「つれなかりけり」


「つれなかりけり」では、思いに応えない相手の冷たさが、胸の奥に深く残る。そして恋の切なさと報われぬ思いの痛みが静かににじみます。
百人一首第85番 俊恵『夜もすがら』和歌全体の情景


恋の思いに沈み、眠れぬまま過ぎていく長い夜。また物思いが深まるほど、夜明けは遠く、しんとした閨の静けさだけが胸に冷たく響いてくる。そして相手のつれなさに心は揺れ、誰にも触れられない孤独がそっと積もっていく。静寂の中で恋の痛みがかすかな光となり、長い夜の余情が静かに漂う一首です。
百人一首第85番 俊恵『夜もすがら』まとめ
俊恵の「夜もすがら」は、
恋の思いに沈む長い夜と、
相手のつれなさを静かに描いた一首です。

上の句では眠れぬ夜の長さを、下の句では応えてくれない心の冷たさを詠み、孤独の中に揺れる恋の痛みが浮かび上がります。

百人一首第85番 俊恵『夜もすがら』背景解説–つれなき夜更けを百人一首の第一歩として、この和歌を味わうことで、和歌の魅力を発見してみてください。
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