中村草田男の夏の俳句で
自然の一瞬に、心の奥をそっと重ねてみませんか?
中村草田男は、高浜虚子に師事しつつも、
西洋思想の影響を受け、
人間の内面や日常の気配を深く見つめた俳人です。

今回の記事では、そんな草田男の夏の俳句5つを厳選し、季語や情景をやさしく解説しました。

感情と風景が響き合う句の世界を、ぜひ味わってみてください。
▶草田男が俳句を学んだ高浜虚子も、夏の自然を細やかに描いた句を多く残しています。
「高浜虚子の夏の俳句5選 – 代表作をわかりやすく解説!」も、あわせてご覧ください。
師と弟子、それぞれのまなざしの違いを感じてみるのも楽しいですね。
中村草田男とは?
中村草田男- Wikipedia(なかむら くさたお)
高浜虚子に師事し、
「ホトトギス」で写生を学んだ俳人です。
一方でニーチェなどの西洋思想にも影響を受け、
自然の風景と人間の心を
重ね合わせるような深い句を多く残しました。

また、石田波郷や加藤楸邨と親しく、のちに「人間探求派」と呼ばれた句風を確立します。

夏の句では、朝ぐもりの雀や、少年のシャツの裂け目など、日常の中にある感情や気配を鮮やかに描いています。
▶草田男のまなざしには、ニーチェなど西洋の思想からの影響も感じられます。
「ニーチェの名言9選 – 現代を生き抜く思想の力」では、そんな哲学の言葉をやさしく紹介しています。俳句と哲学、それぞれの言葉に触れてみると、新しい気づきがあるかもしれません。
中村草田男の夏の俳句5選

「意味」はわたぼうしの意訳なので、解釈の仕方は参考程度に読んでね!
『前向ける 雀は白し 朝ぐもり』


前向ける 雀は白し 朝ぐもり
読み方:まえむける すずめはしろし あさぐもり
季語:朝ぐもり(あさぐもり)
句意:この句では、朝ぐもりの中、こちらに向き直った雀の胸元が白く見える様子が、静けさと気配のある情景として詠まれています。

つまりこの俳句は、曇った朝の光の中、前を向いた雀の胸が白く光って見える一瞬を切り取っています。

また、「前向ける」「白し」という表現が、動きと色彩の変化を静かに印象づけるのがポイントです。
草田男らしい観察の鋭さと、言葉の品格が光る一句で、夏の朝の気配を淡く伝えています。
『六月の 氷菓一盞の 別れかな』


六月の 氷菓一盞の 別れかな
読み方:ろくがつの ひょうかいっさんの わかれかな
季語:氷菓(ひょうか)
句意:この句では、六月に氷菓を一杯ともに味わうことが、別れの場面に静かに重なっている様子が詠まれています。

つまりこの俳句は、六月の暑さのなか、氷菓を一杯ともに味わう時間が、別れの予感をはらんでいることを描いています。

また、「一盞(いっさん)」という丁寧な語彙が、静かで品のある情景と感情の余白を生んでいるのがポイントです。
草田男らしい抑えた表現の中に、深い人間味と詩情がにじむ一句です。
『少年の 夏シャツ右肩 裂けにけり』


少年の 夏シャツ右肩 裂けにけり
読み方:しょうねんの なつしゃつみぎかた さけにけり
季語:夏シャツ
句意:この句では、少年の夏シャツの右肩が裂けている様子を通して、夏の激しさや少年の勢いが詠まれています。

つまりこの俳句は、少年の右肩のシャツが裂けているという一瞬の描写から、夏の熱気や動きの勢いを伝えています。

また、「裂けにけり」という語が、出来事の瞬間性と感情の余韻を生むのがポイントです。
草田男らしい写実の中に、生命力や季節の激しさがあふれる一句で、夏の若さのまぶしさが描かれています。
『はまなすや 今も沖には 未来あり』


はまなすや 今も沖には 未来あり
読み方:はまなすや いまもおきには みらいあり
季語:はまなす
句意:この句では、はまなすが咲く今この場所から沖を見つめると、そこに希望や未来が感じられる様子が詠まれています。

つまりこの俳句は、夏の浜辺に咲くはまなすを前景に、沖の向こうに未来を重ねるまなざしを描いています。

また、「今も沖には未来あり」という断定が、希望や信念を静かに語る強さを印象づけるのがポイントです。
草田男らしい哲学的な詩情と、自然の中に未来を見出す感性が響く一句です。
『夏雲に ただ真白な 山の池』


夏雲に ただ真白な 山の池
読み方:なつぐもに ただましろな やまのいけ
季語:夏雲(なつぐも)
句意:この句では、夏雲が空に広がる中、山の池に映るその白さだけが際立っている光景が詠まれています。

つまりこの俳句は、夏雲が空に広がるなか、山の池に映るその白さだけが印象的に浮かび上がる風景を描いています。

また、「ただ真白な」という表現が、自然の壮大さの中で一点に集中する視線と心の静けさを表しているのがポイントです。
草田男らしい鋭く澄んだ感受性が、色と空間の対比を通して詩情を生み出している一句です。
中村草田男の俳句ちょっとむずかしいクイズ
クイズ:中村草田男の俳句の特徴として正しいのはどれでしょう?
- 古典の知識や歴史的題材を中心に詠んだ
- 派手な技巧や言葉遊びを重ねる句が多い
- 自然と人間の心を重ねる、深く静かな句が多い
▶草田男と並び、「人間探求派」として歩んだ石田波郷の俳句にも、
感情と風景が重なり合う静かな魅力があります。
「イラストでシンプルに楽しむ石田波郷の秋の俳句5選」も、ぜひあわせてご覧ください。
季節が深まるごとに、言葉の表情も変わっていきます。
中村草田男の夏の俳句5選まとめ
中村草田男の夏の俳句は、
自然の中の動きや気配に、
心のゆらぎを重ねる表現が特徴です。
また朝ぐもりの雀や少年のシャツ、
白く光る山の池など、
日常のなかに詩を見いだすまなざしが光ります。

そして言葉の奥にある静かな感情を、やさしく味わえる一句たちです。
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クイズの答え:3.自然と人間の心を重ねる、深く静かな句が多い