上嶋鬼貫の春の俳句で、
静かな春を味わってみませんか?
鬼貫の春の俳句は、
身近な景色や小さな出来事を、
静かにすくい取るところに魅力があります。

このシリーズでは、梅・春雨・霞・蛙など、春を感じさせる代表的な5句を紹介します。むずかしい知識は必要ありません。

感じたまま読むことで、やさしい春の気配が自然と伝わってくるはずです。
春を詠んだ上嶋鬼貫とは?
上嶋鬼貫- Wikipedia(うえじま おにつら)は、
江戸時代中期の俳人です。
25歳で医学を志して大坂へ出た後、
各地の藩に仕え、
勘定役や京都留守居役として働きました。
また実生活の中で培われた視線が、
句の土台となっています。
やがて蕉門の俳人との交流を通じ、
松尾芭蕉とも親交を持つようになり、
その作風から「東の芭蕉・西の鬼貫」と
称されました。

鬼貫は「まこと」を重んじ、飾らない言葉で自然と向き合います。

春の俳句では、静かな景色と人の暮らしが、やさしく溶け合う春が描かれています。
上嶋鬼貫の春の俳句5選

「意味」はわたぼうしの意訳なので、解釈の仕方は参考程度に読んでね!
『山里や 井戸のはたなる 梅の花』


山里や 井戸のはたなる 梅の花
読み方:やまざとや いどのはたなる うめのはな
季語:梅(うめ)
句意:この句では、人里離れた山里の井戸端に、ひっそりと梅が咲いている早春の情景を詠んでいます。

つまりこの俳句は、山里・井戸・梅という身近な要素を重ね、早春の静かな始まりを描いています。

また、人の営みを象徴する井戸と、自然の季節を告げる梅が同じ場所にあることで、暮らしの中に春が入り込む様子が感じられます。
感情を語らず、景だけを示すことで、読む人それぞれの春の記憶を呼び起こす、穏やかな一句です。
『春の水 ところどころに 見ゆる哉』


春の水 ところどころに 見ゆる哉
読み方:はるのみず ところどころに みゆるかな
季語:春の水(はるのみず)
句意:この句では、雪解けや雨で生じた水が、野や道に点々と現れる早春の気配を詠んでいます。

つまりこの句は、一斉に訪れない春を「ところどころ」という言葉で的確に捉えています。地面に現れた水は、季節の兆しであり、確かな変化の証です。

また、大きな動きや感情を描かず、目に入った事実のみを置くことで、読む者は同じ発見の瞬間に立ち会います。
控えめな観察から春を立ち上げる、鬼貫の眼差しが光る一句です。
『あふみにも たつや湖水の 春霞』


あふみにも たつや湖水の 春霞
読み方:あふみにも たつやこすいの はるがすみ
季語:春霞(はるがすみ)
句意:この句では、近江の湖にも春霞が立ちのぼり、広い水面に春の訪れが静かに満ちていく情景を詠んでいます。

つまりこの俳句は、広大な近江の湖にも春が等しく訪れることを、霞というやわらかな現象で示しています。

また、大きな景を扱いながら、誇張はなく、ただ「立つ」様子を見つめる姿勢が印象的です。
湖水と霞が溶け合うことで、境界は曖昧になり、読む者の心も静かにほどけます。雄大さと慎ましさが同居する春景を描いた一句です。
『から井戸へ 飛そこなひし 蛙かな』


から井戸へ 飛そこなひし 蛙かな
読み方:からいどへ とびそこないし かえるかな
季語:蛙(かえる)
句意:この句では、空井戸へ跳ぼうとして失敗した蛙の姿に、春の生きものの不器用さと愛らしさを詠んでいます。

つまりこの俳句は、蛙の跳躍という一瞬の出来事を、失敗という側面から捉えています。

また、滑稽さを強調せず、ただ見たままを置くことで、読者は情景をありのまま受け取ります。
春の生きものは活発でありながら、まだ不完全でもある。そしてその姿に人の営みが重なり、小さな失敗を許すやさしい眼差しが感じられる一句です。
『春雨の けふばかりとて 降にけり』


春雨の けふばかりとて 降にけり
読み方:はるさめの けふばかりとて ふりにけり
季語:春雨(はるさめ)
句意:この句では、春雨が「今日かぎり」と言うかのように、しみじみと降り続く一日の情景を詠んでいます。

つまりこの俳句は、春雨を「今日だけのもの」と捉える感覚によって、季節のはかなさを描いています。

また、強い出来事はなく、ただ雨が降る一日。しかし、その一日が二度と戻らないことを、控えめな言葉で示します。
自然を擬人化しつつも情に流れず、一瞬を見逃さない眼差しが鬼貫らしい写生の美しさを際立たせる一句です。
上嶋鬼貫の俳句ちょっとむずかしいクイズ
クイズ:上嶋鬼貫が、13歳で最初に入門した俳人は誰でしょう?
- 松尾芭蕉
- 松江重頼
- 西山宗因
▶鬼貫と並び称された俳人として、松尾芭蕉の存在は欠かせません。また自然や人生をどう詠んだのか、鬼貫との違いを感じながら読むのも俳句の楽しみです。
生涯・作風・名句をまとめた芭蕉の俳句一覧から、その世界をあらためて味わってみてください。
上嶋鬼貫の春の俳句5選まとめ
上嶋鬼貫の春の俳句は、
山里や雨、水辺など、
身近な景色の中にある春を
静かに描いています。
また派手な表現はなく、
ありのままを見つめるまなざしが特徴です。

今回紹介した5句からは、自然と人の暮らしがそっと重なる春の気配が伝わってきます。

感じたまま読むことで、春がより近くに感じられるはずです。
クイズの答え:2.松江重頼(まつえ しげより)
※鬼貫は幼い頃から俳諧に親しみ、13歳で松江重頼に入門しました。その後、西山宗因の談林派にも学び、やがて「まこと」を重んじる独自の作風へと進んでいきます。


