服部嵐雪の夏の俳句で
夏の訪れを感じてみませんか？
江戸前期の俳人・服部嵐雪は、
庶民の暮らしや季節のうつろいを、
やさしく品のある言葉で詠みました。
今回は、そんな嵐雪が残した夏の俳句から5首を厳選し、また意味や情景をわかりやすく解説します。
涼やかな感性と洒落た観察眼が光る一句たちを、ぜひ味わってみませんか？
▶ 芭蕉を支えた高弟たち「蕉門十哲」の俳句もあわせて楽しみませんか？
それぞれが芭蕉とは違う個性を持ちながら、また俳諧の魅力を広げていった名俳人たちの句をまとめています。
服部嵐雪の人物像を解説
芭蕉十哲-服部嵐雪とは？
服部嵐雪 – Wikipedia（はっとり らんせつ）は、
「蕉門十哲 – Wikipedia」（しょうもんじってつ）の中でも
格式ある文芸的な美しさと抒情性を
兼ね備えた俳人として知られています。
また松尾芭蕉の高弟として学び、
そして芭蕉の理念である「さび」や
「静寂の美」を大切にしながら、
より格調高く、優雅な句風を築いたのが嵐雪の特徴です。
その句には洗練された言葉選びと、情緒あふれる景が描かれており、また季節の移ろいを繊細にとらえる感性が光っています。
そして芭蕉の教えを深く受け継ぎつつも、独自の品格ある作風で俳壇に確かな存在感を示した嵐雪は、蕉門十哲の中でも静かに気品を放つ存在です。
服部嵐雪の俳句の背景には、師である松尾芭蕉の影響が色濃く表れています。
松尾芭蕉の人物像についてはこちらの記事をご覧ください。
夏を詠んだ服部嵐雪とは？
服部嵐雪は、松尾芭蕉の高弟として
知られる江戸前期の俳人です。
夏の俳句では、季節の涼しさや静けさを、
暮らしの風景に寄り添うように詠む表現が特徴的です。
とくに、情緒や品を大切にしながらも、身近な自然や人の気配をやさしく描く作風が、多くの人に親しまれています。
服部嵐雪は、松尾芭蕉の高弟としてその教えを深く受け継ぎながらも、独自の優雅で風流な作風を築きました。
またその背景をより深く理解するには、師である芭蕉の夏の句を知ることも大切です。
👉 松尾芭蕉の夏の俳句5選 – 代表作をわかりやすく解説！
服部嵐雪の夏の俳句5選
「意味」はわたぼうしの意訳なので、解釈の仕方は参考程度に読んでね！
『簔干して 朝々ふるふ 蛍かな』
簔干して 朝々ふるふ 蛍かな
読み方：みのほして あさあさふるう ほたるかな
季語：蛍
句意：この句では、干した簔から朝ごとに蛍がふるえるように飛び立つ様子が詠まれています。
つまりこの句は、夜の仕事や旅で使った簔（みの）を干す朝の光景と、その簔にとまっていた蛍がふるふように飛び立つ様子を描いています。
また「簔干して」という生活感ある動作に対し、「蛍かな」と詠嘆することで、自然の儚さと美しさが際立ちます。
日常の中に宿る詩情を丁寧にすくい上げた、嵐雪らしい静謐な一句です。
▶蛍の光に映るのは、春から続く風流の心。また季節を優美に詠んだ服部嵐雪の春の俳句も、ぜひあわせて味わってみてください。
『空は墨に 画竜覗きぬ ほととぎす』
空は墨に 画竜覗きぬ ほととぎす
読み方：そらはすみに がりゅうのぞきぬ ほととぎす
季語：ほととぎす
句意：この句では、墨のような空に、龍のようにほととぎすが姿を現した様子が詠まれています。
つまりこの句は、曇天や夕暮れで墨色に染まる空を背景に、ほととぎすが鳴きながら飛び去る一瞬を詠んでいます。
「空は墨に」という比喩により、空がまるで絵巻のように表現され、「画竜覗きぬ」では、まるで龍が飛び出すようにほととぎすが姿を現す幻想的な感覚が加わります。
詩的な比喩と動きのある描写で、嵐雪らしい洒脱な一句となっています。
『山鳥の おろおろなきや 五月雨』
山鳥の おろおろなきや 五月雨
読み方：やまどりの おろおろなきや さつきあめ
季語：五月雨
句意：この句では、五月雨に迷うように、山鳥がおろおろと鳴いている様子が詠まれています。
つまりこの句は、山鳥が五月雨の中で戸惑いながら鳴いているようすをとらえた一句です。
また、「五月雨」の長く降り続く様子と山の静寂が重なり、自然と生き物の一体感と哀愁がにじむ情景となっています。
嵐雪の鋭い観察と詩情のまじわりが光る作品です。
『老ひとつ これを荷にして 夏衣』
老ひとつ これを荷にして 夏衣
読み方：おいひとつ これをににして なつごろも
季語：夏衣
句意：この句では、老いという一つの重荷を背負いながら、夏衣をまとって歩む様子が詠まれています。
つまりこの句は、歳を重ねることを静かに受け止めつつ、それを荷物のように背負って生きていく姿勢を詠んでいます。
また「老ひとつ」という言葉に、年齢を否定せずに引き受ける潔さがにじみます。そして「夏衣」は、季節の軽やかさと対照的に、人生の重みをさらりと受け流すような心の柔らかさを感じさせます。
人生と季節が交錯する、嵐雪らしい静かな悟りの一句です。
『しだり尾の 長屋長屋に 菖蒲哉』
しだり尾の 長屋長屋に 菖蒲哉
読み方：しだりおの ながやながやに しょうぶかな
季語：雛（ひな）
句意：この句では、長く垂れる菖蒲の葉が、長屋の軒ごとに美しく連なっている様子が詠まれています。
つまりこの句は、端午の節句に飾られた菖蒲の葉が、長屋の軒先にしなやかに垂れて並ぶ様子を詠んでいます。
また「しだり尾」は、柿本人麻呂の和歌を踏まえた掛詞的表現で、長く垂れる菖蒲の形と「長屋長屋」の繰り返しが響き合い、視覚的な連続性と古典的情緒を融合させています。
江戸の町に漂う季節の美と、和歌への敬意が込められた一句です。
▶「しだり尾」という表現から思い出されるのは、あの名歌――。万葉の恋歌、柿本人麻呂の『あしびきの』に込められた深い余情を、一緒にひもといてみませんか？
服部嵐雪の俳句ちょっとむずかしいクイズ
クイズ：服部嵐雪の俳句の特徴として、次のうち最もふさわしいものはどれでしょう？
- 自然描写よりも哲学的な思想が多い
- 洒脱な表現と季節感をやさしく取り入れている
- 奇抜な言葉遊びを多用することで有名
服部嵐雪の夏の俳句5選まとめ
服部嵐雪の夏の俳句には、
暮らしの中にある季節のやさしさと
涼感がにじみます。
また芭蕉の高弟らしく、
自然を見つめるまなざしは穏やかで、
言葉選びにも品があります。
この記事「服部嵐雪の夏の俳句5選-代表作をわかりやすく解説！」では、嵐雪の夏の俳句を5つ厳選し、初心者の方にもわかりやすく解説しました。
嵐雪の一句が、あなたの日々にほんの少しの涼しさとやさしさを届けますように。
クイズの答え：２．洒脱な表現と季節感をやさしく取り入れている
※服部嵐雪は、芭蕉の高弟として、風流を大切にしながらも、暮らしの中の情緒をやわらかく表現する作風が特徴です。
