種田山頭火の秋の俳句で、
孤独の中のあたたかさを見つけてみませんか？
放浪の俳人・種田山頭火が見つめた秋には、
静けさとぬくもりが同居しています。
また自由律の言葉の流れの中に、
孤独の中のやさしさや生きる切なさがにじみます。
本記事では、山頭火の代表的な秋の俳句5選を、情景と心の動きを交えてやさしく解説します。
▶前回の記事はこちらから！
前回は、自由律俳句の旗手・種田山頭火が詠んだ夏の情景をご紹介しました。
蛍、蝉時雨、夏の月――どの句にも、孤独の中にある静かな生命の輝きが息づいています。
山頭火の詩情あふれる夏の俳句を、ぜひもう一度味わってみてください。
秋を詠んだ種田山頭火とは？
種田山頭火- Wikipedia（たねだ さんとうか）は、
放浪の旅を続けながら自由律俳句を詠んだ俳人です。
また定型にとらわれない言葉で、
自然や人の心のありのままを表現しました。
とくに秋の俳句には、静けさや孤独の中にあるぬくもり、そして生きることの切なさが込められています。
そして風・月・花などの身近な景色に、自分の心を重ねることで、読む人の心にも共鳴するやさしい世界を描きました。
種田山頭火の秋の俳句5選
「意味」はわたぼうしの意訳なので、解釈の仕方は参考程度に読んでね！
『曼珠沙華のみ 眼に燃えて 野分夕空し』
曼珠沙華のみ 眼に燃えて 野分夕空し
読み方：まんじゅしゃげのみ めにもえて のわきゆうぞらし
季語：曼珠沙華（まんじゅしゃげ）
句意：この句では、野分のあとの夕空の下で、曼珠沙華の赤だけが強く目に焼きつく情景が詠まれています。
つまりこの俳句は、嵐が過ぎた静けさの中で、曼珠沙華の赤が強烈に残る瞬間を描いています。
また「燃えて」という表現には、生きることへの激しい衝動と、孤独に耐える心の炎が重なります。
「夕空し」と結ぶことで、生の哀しみと美の余韻が静かに広がり、そして山頭火らしい無常の美意識が詩情を豊かにしています。
『ほろほろ ほろびゆく わたくしの秋』
ほろほろ ほろびゆく わたくしの秋
読み方：ほろほろ ほろびゆく わたくしのあき
季語：秋（あき）
句意：この句では、秋の深まりとともに、自身が静かに崩れていくような感覚を詠んでいます。
つまりこの俳句は、生の終わりと心の崩壊を、秋の静けさに重ねた晩年の自画像です。
また「ほろほろ」という音に、涙・落葉・命の崩れがすべて溶け込み、
「わたくしの秋」が人生の黄昏を象徴します。
言葉少なくして、滅びゆくものの中にある安らぎと受容を描いた、山頭火の自由律俳句の極みといえる一句です。
『思ひはぐるる 星月夜 森の心澄む』
思ひはぐるる 星月夜 森の心澄む
読み方：おもいはぐるる ほしづきよ もりのこころすむ
季語：星月夜（ほしづきよ）
句意：この句では、思いが渦巻く夜に、星月夜の森の静けさの中で心が澄み渡っていく感覚が詠まれています。
つまりこの俳句は、揺れる思いが静けさに溶けていく心の浄化を描いています。
また「思ひはぐるる」が人の迷いを示し、「星月夜」がその迷いを包み込む光となる。
終句の「森の心澄む」には、外界の静けさが内面へと転写される瞬間があり、山頭火特有の孤独と救いの均衡が、夜の透明さとともに詩情を深めています。
『円い月が ぽかと出て 対岸灯し初めし』
円い月が ぽかと出て 対岸灯し初めし
読み方：まるいつきが ぽかとでて たいがんともしはじめし
季語：月（つき）
句意：この句では、円い月が静かに昇り、対岸の灯りがともりはじめる穏やかな夜の情景を詠んでいます。
つまりこの俳句は、月光と人の灯りが響き合う夜の静かな交差を描いています。
また「ぽかと出て」という素朴な表現に、山頭火特有の自然への親しみと驚きが込められ、「対岸灯し初めし」が人の暮らしの温もりを添える。
孤独な放浪の中にも、世界と心がつながる一瞬の安らぎがあり、その静かな調和が詩情を深めています。
『鉄柵の中 コスモス咲きみちて 揺る』
鉄柵の中 コスモス咲きみちて 揺る
読み方：てっさくのなか こすもすさきみちて ゆる
季語：秋桜（コスモス）
句意：この句では、鉄柵の中で咲き満ちるコスモスが風に揺れる情景を詠んでいます。
つまりこの俳句は、閉ざされた空間の中に咲く命の自由を描いた作品です。
また「鉄柵の中」が社会や束縛の象徴なら、「コスモス咲きみちて揺る」はその中で生きる美と抵抗の象徴。
風に揺れる花の姿には、不自由の中にもなお咲こうとする生命の誇りが宿り、山頭火らしい孤独と希望の共存が静かに表現されています。
種田山頭火の秋の俳句ちょっとむずかしいクイズ
クイズ：. 「ほろほろ ほろびゆく わたくしの秋」――この句に込められた山頭火の気持ちとして最も近いものはどれでしょう？
- 秋の風に癒やされている
- 自分の人生の終わりを静かに受け入れている
- 新しい旅立ちに胸を高鳴らせている
▶さらに深く知りたい方へ
季語のある句・ない句それぞれから、山頭火の世界はより立体的に見えてきます。
👉種田山頭火の無季俳句5選―自由律俳句の代表作と人物像に迫る
どちらも句の奥行きと人物像が感じられるおすすめの記事です。
種田山頭火の秋の俳句5選まとめ
山頭火の俳句には、
静けさと人のぬくもりが
そっと息づいています。
また秋という季節を通して、
孤独の中にも光を見いだす心が描かれています。
言葉は少なくても、その余白には生きることのやさしさと切なさが広がり、読む人の心に静かに響きます。
クイズの答え：２．自分の人生の終わりを静かに受け入れている
