百人一首第十六番 中納言行平『立ち別れ』を情景と背景から完全解説で、
和歌の世界を旅してみませんか?
第十六番に選ばれているのは、
中納言行平の「立ち別れ」。
いなばの山に生える松に「待つ」をかけて、
再会への想いを歌い上げたこの和歌は、
離別の悲しみと希望が交差する一首です。
今回ご紹介するのは、第十六番『立ち別れ』。平安時代の美意識や自然を詠む感性が詰まったこの歌を、情景や背景から詳しくひも解いてみましょう。

百人一首第十六番 中納言行平『立ち別れ』を情景と背景から完全解説では、初心者の方にもわかりやすく、和歌の背景や楽しみ方を丁寧に解説していきます。
和歌の魅力をより深く理解するために、和歌と短歌の違いを学べる記事もぜひご覧ください。和歌の形式や表現の違いを学ぶことで、百人一首の味わいがより一層広がります。
また、百人一首の流れを追って楽しむことで、和歌の歴史や背景がより深く感じられます。前の歌をまだご覧になっていない方は、ぜひ百人一首第十五番 光孝天皇『君がため』の記事も併せてご覧ください。
中納言行平の生涯と百人一首の背景
生涯について


中納言行平(在原行平) – Wikipedia(818~893年)は、
平安時代初期の貴族で、
在原業平の兄としても知られます。
また文学的才能に恵まれ、
『古今和歌集』にも多数の和歌が
収められています。

彼の和歌は、感情豊かで自然美を詠んだものが多く、百人一首における「立ち別れ」もその代表的な一首です。

また、行平は宮廷の要職を歴任し、文化的な影響を広めました。
歴史的イベント
中納言行平は、
平安時代初期の宮廷社会で活躍し、
その和歌は『古今和歌集』に
多数収録されています。彼の時代、
藤原氏の権勢が拡大し、
貴族社会は文化や芸術の発展を遂げました。

また行平は、宮廷人として政治に関与する一方で、文学的才能を発揮し、自然や感情を詠む和歌を多く残しました。

そしてその中で百人一首に選ばれた「立ち別れ」は、和歌文化の豊かさを象徴する一首です。
他の歌について
中納言行平の他の代表作には
「春のきる 霞の衣 ぬきをうすみ 山風にこそ みだるべらなれ」があります。
この和歌では、春の霞が風に乱れる様子を
美しい比喩で描写し、繊細な自然描写が光ります。

彼の和歌は、『古今和歌集』にも多く収められており、また平安時代特有の優美な感性を伝えるものとして知られています。

そしてこの歌を通じて、自然と人の心の調和を感じ取ることができます。
百人一首における位置付け
この和歌は百人一首第十六番に選ばれ、
中納言行平の切ない別れの心情を
象徴しています。
別離の悲しみと再会への願いを
「まつ(待つ/松)」の掛詞で巧みに表現し、
平安時代の美意識を感じさせます。
別れにまつわる歌として、
多くの人々の心に響き続けています。
中納言行平がなぜこの和歌を詠んだのか?
百人一首第十六番 中納言行平『立ち別れ』を情景と背景から完全解説では、中納言行平がなぜこの和歌を詠んだのか?についてポイントを3つに分けてみました。
- 別れの悲しみを詠む
- 再会の願いを象徴する掛詞
- 離別の普遍性を描く
別れの悲しみを詠む
中納言行平は、
遠く離れる人への深い別れの悲しみを
「立ち別れ」という表現に込めました。
またこの感情が、
和歌全体の切なさを支えています。
再会の願いを象徴する掛詞
「松」を「待つ」に掛け、
再会への強い願いを示しています。
また自然の風景を借りて心情を巧みに描き、
感情が際立つ構成となっています。
離別の普遍性を描く
この和歌では、
特定の恋愛にとどまらず、
人生における離別そのものの切なさを
詠み込んでいます。
また普遍的なテーマが時代を超えて
共感を呼びます。

「立ち別れ」という別離の悲しみが和歌全体を包み込む一方、「松」と「待つ」を掛けた表現が再会への希望を繊細に描き出しています。

この和歌では、恋愛にとどまらず、友人や家族との離別にも共通する普遍的な切なさを訴えています。
人生の別れという誰もが経験するテーマを詠み込むことで、現代の読者にも共感を呼び起こす一首といえます。
読み方と句意


百人一首 十六番 中納言行平
歌:立ち別れ いなばの山の 峰に生ふる まつとし聞かば 今帰り来む
読み:たちわかれ いなばのやまの みねにおふる まつとしきかば いまかへりこむ
句意:離別の悲しみを胸に抱きながら、またいなば山の松のように再会を待つ気持ちを重ねて詠んだ切ない一首です。
この和歌の楽しみ方
百人一首第十六番 中納言行平『立ち別れ』を情景と背景から完全解説では、この和歌の楽しみ方のポイントをこの3つに分けてみました。
- いなば山の松を詠む象徴性
- 離別の悲しみとその余韻に浸る
- 自然描写から感じる平安時代の情感
いなば山の松を詠む象徴性
いなば山の松は、
再会を願う心の象徴です。
この松を詠むことで、
行平の揺れ動く感情が自然と
共鳴しています。
山の松が季節を超えて変わらないように、再会への希望が変わらず続く様子を想像しながら読むと、和歌が持つ深みが感じられます。
離別の悲しみとその余韻に浸る
行平が詠んだ別れの悲しみは、
和歌の中で静かに心に
訴えかけてきます。
この余韻に浸ることで、離別の悲しみだけでなく、また再会を待つ時間の長さや切なさが、読者自身の中にも浮かび上がるでしょう。
自然描写から感じる平安時代の情感
和歌に描かれる自然、
特に松や山風は、
行平の感情を映し出す舞台と
なっています。
平安時代の美意識を背景に、この和歌を味わうと、自然と人間の感情が密接に絡み合う世界観を堪能することができます。
百人一首第十六番『立ち別れ』の情景と解説
上の句(5-7-5)
上の句「立ち別れ いなばの山の 峰に生ふる」では、
旅立ちと別れを象徴する情景を描いています。
また「立ち別れ」は愛する人との別れを切実に表現し、
「いなばの山の峰に生ふる松」は、
再会を誓う希望の象徴として詠まれています。
そしてこの和歌は、自然を巧みに用いて、
別離の悲しみと未来への願いを
一体化させた平安時代特有の繊細な
感性が伝わる一節です。
五音句の情景と意味 「立ち別れ」


「立ち別れ」では、人との別れの瞬間を象徴する言葉です。そして切なさと未練が込められた出発の情景が心に響きます。
七音句の情景と意味 「いなばの山の」


「いなばの山の」では、鳥取県の稲葉山を指し、故郷を離れる旅路を暗示してます。また自然を通じて別れの深さが際立ちます。
五音句の情景と意味 「峰に生ふる」


「峰に生ふる」では、山頂に立つ松は変わらぬ存在として希望を象徴してます。そして再会を願う心が込められています。
下の句(7-7)分析
下の句「まつとし聞かば 今帰り来む」は、
松の木に「待つ」と掛けて、
再会を誓う心情が込められています。
また「まつとし聞かば」は相手が待っていると
知ればすぐに戻るという思いを表し、
離別の切なさと再び会うことへの
強い願いが感じられます。
この句では、別れても変わらぬ愛情と
絆を象徴しており、離れていても
心が繋がっていることを示しています。
七音句の情景と意味 「まつとし聞かば」


「まつとし聞かば」では、松の木に「待つ」を掛け、相手の気持ちを確認したい切実な思いが込められている。
七音句の情景と意味 「今帰り来む」


「今帰り来む」では、待っていると知れば、すぐにでも戻るという強い決意と再会への願いが描かれている。
和歌全体の情景


和歌全体では、旅立ちを前にして別れを惜しむ情景を描いています。また「いなばの山の松」に「待つ」を掛け、離れる相手への気持ちを託しています。相手が自分を待ってくれていると聞けば、再び戻るという約束を込めた和歌です。そして山の静寂と切ない心情が交錯する情景は、離別の寂しさと再会への希望を巧みに表現しています。
まとめ
この和歌は、旅立ちの際に交わされる約束と
別れの切なさを巧みに表現しています。
また「いなばの山」と「松」を「待つ」に掛け、
相手が待ってくれているなら必ず戻る
という決意を示しています。

この和歌では、旅立つ者と見送る者の心が交錯し、離別の寂しさと再会への希望が込められています。

百人一首第十六番 中納言行平『立ち別れ』を情景と背景から完全解説を百人一首の第一歩として、この和歌を味わうことで、和歌の魅力を発見してみてください。