百人一首第十七番 在原業平『ちはやぶる』を情景と背景から完全解説で、
和歌の世界を旅してみませんか?
百人一首の中でも、自然の美しさと
詩的感性が響き合う和歌の数々。
そして今回は、その中でも秋の紅葉と竜田川の情景を
描いた在原業平の名歌に焦点を当てます。
今回ご紹介するのは、第十七番『ちはやぶる』。一首の背景にある文化や自然の魅力を深く読み解きながら、あなたも平安時代の詩情を感じてみませんか?

百人一首第十七番 在原業平『ちはやぶる』を情景と背景から完全解説では、初心者の方にもわかりやすく、和歌の背景や楽しみ方を丁寧に解説していきます。
和歌の魅力をより深く理解するために、和歌と短歌の違いを学べる記事もぜひご覧ください。和歌の形式や表現の違いを学ぶことで、百人一首の味わいがより一層広がります。
また、百人一首の流れを追って楽しむことで、和歌の歴史や背景がより深く感じられます。前の歌をまだご覧になっていない方は、ぜひ百人一首第十六番 中納言行平『立ち別れ』の記事も併せてご覧ください。
在原業平の生涯と百人一首の背景
生涯について


在原業平 – Wikipedia(825~880年)は、
平安時代の貴族であり、
六歌仙の一人として知られています。
風雅で情熱的な性格から、
多くの恋物語や逸話が残されています。

また藤原氏の権勢の中で政治的には恵まれませんでしたが、詩歌に秀で、美しい自然や恋愛を詠み込む才能を発揮しました。

そしてその人生は『伊勢物語』の主人公としても描かれ、平安文学において特別な存在感を放っています。
歴史的イベント
在原業平は、平安時代中期、
藤原氏が権力を握る中で活躍しました。
彼は、仁明天皇の寵愛を受けましたが、
藤原氏の繁栄に対抗する立場ゆえに
重要な役職には就けませんでした。

また、彼の人生や恋愛が多くの和歌や物語の題材となり、『伊勢物語』に象徴されるような文化的な足跡を残しました。

そしてその詩的才能と自由な精神は、当時の宮廷文化に大きな影響を与えました。
他の歌について
在原業平の和歌は、恋愛や旅情を巧みに詠み、
情感豊かに表現しています。
「名にし負はば いざこと問はむ 都鳥 わが思ふ人は ありやなしやと」では、
都鳥に思い人の安否を尋ねる切ない気持ちを描き、
自然と人間の心情を巧みに絡めています。

その直情的で繊細な詠みぶりは、彼の和歌全体の特徴として後世に大きな影響を与えました。
百人一首における位置付け
この和歌は百人一首第十七番に選ばれ、
自然美と人間の感情を融合させた名歌です。
「ちはやぶる」の鮮やかな情景表現は、
平安時代の詩的感性を象徴し、
百人一首の中でも特に視覚的印象の強い
一首として位置付けられています。
在原業平がなぜこの和歌を詠んだのか?
百人一首第十七番 在原業平『ちはやぶる』を情景と背景から完全解説では、在原業平がなぜこの和歌を詠んだのか?についてポイントを3つに分けてみました。
- 自然の美しさを賛美するため
- 神秘性を強調するため
- 情感豊かな自然描写の追求
自然の美しさを賛美するため
竜田川の紅葉が川面を染める様子を詠み、
自然が生み出す神秘的な美しさを賛美しています。
また当時、紅葉は季節の移ろいを
象徴する重要なテーマであり、
その風景を詩的に表現することで
感動を共有しました。
神秘性を強調するため
「神代も聞かず」と詠むことで、
古代の神話の世界を超えるような自然の
奇跡的な光景を強調しています。
また紅葉と川の組み合わせが、
神々しいまでの美しさを見せる
瞬間を切り取りました。
情感豊かな自然描写の追求
紅葉が水を染め上げる様子を
「水くくる」と独自の比喩で表現し、
情景と感情を一体化させました。
またこの比喩表現は、見る者に鮮烈な
イメージを与えるため、
詩人の感性が反映されています。

この和歌は、在原業平の卓越した観察力と詩的感性が光る作品です。また当時の人々にとって、自然の美しさは感情を投影する重要な題材でした。

この一首を通して、竜田川の紅葉が単なる風景ではなく、心を揺さぶる情景として読み手に深く印象付けられています。
自然と心情の融合が、この和歌の最大の魅力です。
読み方と句意


百人一首 在原業平
歌:ちはやぶる 神代も聞かず 竜田川 からくれなゐに 水くくるとは
読み:ちはやぶる かみよもきかず たつたがは からくれなゐに みづくくるとは
句意:竜田川を流れる紅葉が水を赤く染める様子を、神代の時代にもない神秘的な美しさとして詠んだ歌。
この和歌の楽しみ方
百人一首第十七番 在原業平『ちはやぶる』を情景と背景から完全解説では、この和歌の楽しみ方のポイントをこの3つに分けてみました。
- 情景描写を楽しむ
- 枕詞の響きを楽しむ
- 比喩表現を味わう
情景描写を楽しむ
竜田川の紅葉が水面を染める様子を、
目に浮かぶような描写で味わえます。
「からくれなゐに 水くくる」という比喩表現が、
自然の美しさをより鮮明に伝えています。
この和歌では、紅葉が川面を染める鮮やかな情景を詠んでいます。紅葉の赤色と流れる水の動きを、視覚的かつ詩的に感じ取れる点が魅力です。そして当時の自然観や、風景を心象風景に置き換える技法を楽しめます。
枕詞の響きを楽しむ
「ちはやぶる」という枕詞の響きが、
冒頭から詩的なリズムを生み出し、
神秘的な情景の始まりを印象付けます。
枕詞「ちはやぶる」は、力強く荘厳な印象を与えます。この響きが、和歌全体に神秘的な雰囲気を加えています。そして古典的な表現を味わいながら、平安時代の言葉遊びや美意識を楽しむことができます。
比喩表現を味わう
「水くくる」という表現が、
紅葉と水流の動きを一体化させ、
自然の生き生きとした様子を感じさせます。
「水くくる」は、紅葉が水を赤く染める様子を絞る動作にたとえた独特の比喩です。この表現を通じて、静かな秋の景色の中に動きが生まれ、自然の変化を繊細に捉えています。そして言葉の感性を楽しむ醍醐味があります。
百人一首第十七番『ちはやぶる』の情景と解説
上の句(5-7-5)
上の句「ちはやぶる 神代も聞かず 竜田川」では、
竜田川の紅葉が織り成す情景を、
神話的で荘厳な雰囲気の中に描いています。
また冒頭の「ちはやぶる」が視覚的な印象を強め、
読み手を秋の風景へと誘います。
五音句の情景と意味 「ちはやぶる」


「ちはやぶる」では、力強く荘厳な印象を与える枕詞で、自然の神秘と竜田川の情景を引き立てます。
七音句の情景と意味 「神代も聞かず」


「神代も聞かず」では、神話時代でさえも見たことがない、奇跡的な紅葉の美しさを強調しています。
五音句の情景と意味 「竜田川」


「竜田川」では、紅葉の名所として知られる竜田川を舞台に、秋の風情と流れる川の動きを描きます。
下の句(7-7)分析
下の句「からくれなゐに 水くくるとは」は、
竜田川に流れる紅葉が水を赤く染める情景を、
比喩表現で生き生きと描いています。
また「からくれなゐに」で鮮やかな紅色を、
「水くくるとは」で染まる様子を動的に表現し、
自然の美しさと動きが詩的に融合しています。
七音句の情景と意味 「からくれなゐに」


「からくれなゐに」では、紅葉の鮮やかな赤色が川面を染める様子を、絵画のように鮮明に表現しています。
七音句の情景と意味 「水くくるとは」


「水くくるとは」では、紅葉が川面に絡み合い、水を絞るように染める動きを巧みに表しています。
和歌全体の情景


和歌全体では、竜田川に流れる紅葉が水面を鮮やかな赤に染める情景を描いた和歌です。また紅葉の鮮烈な色彩が川の流れと絡み合い、まるで絞り染めのように水を染め上げる様子が詩的に表現されています。そして神話的な枕詞「ちはやぶる」で始まり、紅葉の名所としての竜田川が壮麗な秋の自然美を舞台にしています。
まとめ
この和歌は、竜田川に流れる紅葉が
水面を鮮やかに染める様子を、
神秘的で荘厳な言葉で表現しています。
また「ちはやぶる」という枕詞が情景に力強さを加え、
「からくれなゐ」と「水くくる」という比喩が、
紅葉と川の動きを鮮やかに描き出します。

この和歌は、自然の美しさとそこに込められた詩的な感動を存分に味わえる名歌といえるでしょう。

百人一首第十七番 在原業平『ちはやぶる』を情景と背景から完全解説を百人一首の第一歩として、この和歌を味わうことで、和歌の魅力を発見してみてください。