百人一首第72番 祐子内親王家紀伊『音に聞く』で、
和歌の世界を旅してみませんか?
噂に聞く高師の浜のあだ波を、
恋の不誠実になぞらえ、
袖を濡らすような涙の恋を避けようとする強い心。

この一首には、女性ならではの繊細さと気高さ、そして覚悟が込められています。

風景と心情を重ねて詠まれた、気品ある恋の和歌をひも解いてみましょう。
和歌の魅力をより深く理解するために、和歌と短歌の違いを学べる記事もぜひご覧ください。また和歌の形式や表現の違いを学ぶことで、百人一首の味わいがより一層広がります。
百人一首の流れを追って楽しむことで、和歌の歴史や背景がより深く感じられます。そして前の歌をまだご覧になっていない方は、ぜひ百人一首第71番 源経信『夕されば』記事も併せてご覧ください。
祐子内親王家紀伊の生涯と百人一首の背景
生涯について


平安時代後期の女性歌人で、
女院祐子内親王に仕えた女房(宮仕えの女性)です。
清少納言や和泉式部などと同様に、
宮廷文学が華やかだった時代に活躍し、
恋の機微を繊細に詠む才媛として知られました。

またその作風は、気品と感情の深さをあわせ持ち、『金葉和歌集』などにも入集しています。

百人一首に選ばれた一首では、恋の不実を見抜きつつ、自らの誇りを守る決意が端正な言葉で表現されています。
歴史的イベント
祐子内親王家紀伊は、
後一条天皇の皇女・祐子内親王に仕えた女房で、
女院御所で和歌の才能を発揮しました。
また当時の歌合(うたあわせ)などにも
参加していたと考えられ、
宮廷文化のなかで恋愛と
噂が交錯する現実を肌で感じていた存在です。

その経験が、百人一首に採られた和歌にも反映されており、噂に流されず自らを守ろうとする女性の強さが印象的です。

平安女性たちの誇りと慎みを、静かに象徴する一人といえるでしょう。
他の歌について
祐子内親王家紀伊は『金葉和歌集』に、
「うらむなよ影見えがたき夕月夜おぼろけならぬ雲間まつ身ぞ」
という歌を残しています。
この歌では、月が雲に隠れて姿を見せない情景を、
思いを寄せる相手に逢えない切なさと重ねた恋の歌です。

“おぼろけならぬ雲間”という表現には、並々ならぬ事情や心の葛藤がにじみ、祐子内親王家紀伊が抱く複雑な恋情と、自身の名誉を守ろうとする品格が感じられます。

百人一首の「音に聞く」と同様、女性の内なる強さと気品ある距離感が特徴的な一首です。
百人一首第72番 祐子内親王家紀伊『音に聞く』の百人一首における位置付け
噂と恋心を重ねたこの歌は、
恋の危うさに理性で立ち向かう女性の姿を
描いた作品です。
また百人一首の中でも、
比喩と掛詞を巧みに用いながら気高さを保つ、
平安女性歌人らしい品位ある一首として
位置付けられます。
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祐子内親王家紀伊がなぜこの和歌を詠んだのか?
百人一首第72番 祐子内親王家紀伊『音に聞く』背景解説–あだ波の誓いでは、祐子内親王家紀伊がなぜこの和歌を詠んだのか?についてポイントを3つに分けてみました。
- 恋の噂に惑わされないため
- 心を守る誇りを示すため
- 比喩で感情を上品に表現するため
恋の噂に惑わされないため
「音に聞く」という冒頭に、
噂として伝わる不誠実な恋を受け止めつつ、
自らはそれに心を許さないという意志を
こめています。
また理性的な判断が詠まれた、
凛とした始まりです。
心を守る誇りを示すため
「かけじや袖の」の表現は、
恋の涙に濡れるようなことはしない、
という気高さと自己防衛の強い決意を表します。
これは女性としての矜持を象徴しています。
比喩で感情を上品に表現するため
恋心や拒絶を直接的に語らず、
「高師の浜」「あだ波」など
自然の景と掛詞を通して感情を包むことで、
平安和歌らしい美学と余情が込められています。

この和歌では、恋に揺れる心を持ちながらも、噂や不誠実な相手に巻き込まれまいとする冷静な視点が貫かれています。

また直接的に相手を責めたり、自らの想いを露わにするのではなく、自然の風景や地名の比喩を用いて、心を包みながら強さをにじませる技法が光ります。
平安女性の誇りと慎みが感じられる秀歌です。
読み方と句意


百人一首第 祐子内親王家紀伊
歌:音に聞く 高師の浜の あだ波は かけじや袖の ぬれもこそすれ
読み:おとにきく たかしのはまの あだなみは かけじやそでの ぬれもこそすれ
句意:この和歌では、名高い高師の浜のあだ波のような浮ついた噂の恋には関わるまい。袖が涙で濡れてしまっては困るからと詠まれています。
「音に聞く」――いまの私たちなら、どう感じるのだろう?
人の噂に惑わされないこと、軽い関係に流されず自分を大切にすること、そして感情を理性で抱きしめること――この和歌が語る「あだ波の誓い」は、いまを生きる私たちにも共鳴する心の姿勢です。
- 噂に振り回されない強さ
- 軽い関係には近づかない判断力
- 感情を理性で包む美しさ
噂に振り回されない強さ
現代でも、
SNSや人間関係の中で流れる声に
心を乱されることは少なくありません。
またそんなときこそ、
本当に信じるべき自分の感覚を
見失わない強さが求められます。
「音に聞く」という表現は、聞こえてくる評判や他人の目を意味します。
軽い関係には近づかない判断力
一見魅力的でも、
誠実さのない関係に踏み込まないことは、
自分自身を守る大切な判断です。
また心が揺れても、
自ら距離をとる姿勢に
現代の誇りがにじみます。
「あだ波」は移ろいやすい、信頼できないものの象徴。
感情を理性で包む美しさ
現代でも、過度に感情を出すよりも、
静かに意志を伝える人にこそ
気高さや美しさが宿るのかもしれません。
涙をこぼす前に袖を引くように、この和歌は感情を押しつけることなく、品よく距離をとる心を描いています。
百人一首第72番 祐子内親王家紀伊『音に聞く』の楽しみ方
百人一首第72番 祐子内親王家紀伊『音に聞く』背景解説–あだ波の誓いでは、この和歌の楽しみ方のポイントをこの3つに分けてみました。
- 掛詞の妙を味わう
- 恋の誇りに共感する
- 風景に込められた感情を読む
掛詞の妙を味わう
「音」は噂、「かけじ」は“波を掛けない”と
“関係を持たない”の二重意味。
「ぬれもこそすれ」では
“袖が濡れてしまう=涙”を連想させます。
また自然の描写に見せかけて、
心情を繊細に織り込んだ技巧の美が
楽しめる一首です。
「音に聞く」「あだ波」「かけじ」など、この歌には巧みな掛詞や比喩表現が盛り込まれています。言葉の多層的な意味に注目すると、和歌の奥行きが見えてきます。
恋の誇りに共感する
相手を責めるでもなく、
感情を爆発させるでもなく、
静かに距離をとる理性的なふるまいは、
平安女性の気品と
美意識を象徴しています。
また自分を大切にしたいと願うすべての人に、
そっと寄り添ってくれるような
余韻があります。
涙を流すような恋に巻き込まれないとする姿勢に、自尊心を守る強さと美しさを感じます。現代人にも通じる感情の処し方です。
風景に込められた感情を読む
「高師の浜」は当時から波が荒く、
名高い場所として知られていました。
またその風景を恋の不実さに
なぞらえることで、
言葉に出せない感情を自然に託す。
そして和歌が持つ“風景=心”の構図を、
この一首でしみじみと
感じることができます。
高師の浜のあだ波という実在の地名が、心の揺れと噂の危うさを象徴しています。自然と心情の重なりを味わうのが醍醐味です。
百人一首第72番 祐子内親王家紀伊『音に聞く』背景解説
上の句(5-7-5)
上の句「音に聞く 高師の浜の あだ波は」では、
名高い“高師の浜”に打ち寄せる
移ろいやすい波を、
人の噂や不誠実な恋心に重ねています。
また風景を借りて、
自身の心に迫る不穏な気配を
詠み出す技巧的な上句です。
五音句の情景と意味「音に聞く」


「音に聞く」では、人づてに聞こえてくる評判やうわさ。そして目にしていないのに心をざわつかせる、恋の気配や風評が漂います。
七音句の情景と意味「高師の浜の」


「高師の浜の」では、風が吹きつける浜辺の名所。そして波が荒く移ろいやすい高師の浜は、不安定な心情や恋を映す舞台です。
五音句の情景と意味「あだ波は」


「あだ波は」では、寄せては返す、浅くて当てにならない波。そして信じられない相手の心や、あやふやな関係の象徴となっています。
下の句(7-7)分析
下の句「かけじや袖の ぬれもこそすれ」では、
あだ波のような恋に関われば、
涙で袖を濡らすことに
なるかもしれないから関わるまい、
という慎みと決意の表れです。
また感情に流されず、
理性をもって距離をとる強さが
にじむ結句となっています。
七音句の情景と意味「かけじや袖の」


「かけじや袖の」では、寄せる波のような噂の恋に、自らの袖(心)を掛けまいと静かに決意する場面。誇りと慎みがにじみます。
七音句の情景と意味「ぬれもこそすれ」


「ぬれもこそすれ」では、袖が濡れる=涙を流すことを恐れ、心の痛みを未然に防ごうとする理性的な姿勢が浮かびます。
百人一首第72番 祐子内親王家紀伊『音に聞く』和歌全体の情景


高師の浜に打ち寄せるあだ波は、うわさや浮ついた恋の象徴。またその波に袖をかけまいと、女性は静かに心を決めます。そして風評に揺れる心を理性で押さえ、涙に濡れる前に一線を引く――秋の浜辺の風景に、誇り高い恋の覚悟が重ねられています。
百人一首第72番 祐子内親王家紀伊『音に聞く』まとめ
この和歌は、高師の浜の“あだ波”を、
うわさや移ろいやすい恋の象徴として
詠んでいます。
また人の噂に心を動かされながらも、
涙に濡れるような恋には
関わるまいという誇りある決意がにじみます。
そして自然の情景に感情を託し、
比喩と掛詞で心の奥を静かに語る手法は、
まさに平安和歌の粋。

祐子内親王家紀伊の和歌は、女性の強さと美しさが響きあう一首として、現代の私たちにも共感を呼び起こします。。

百人一首第72番 祐子内親王家紀伊『音に聞く』背景解説を百人一首の第一歩として、この和歌を味わうことで、和歌の魅力を発見してみてください。
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