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百人一首第71番 源経信『夕されば』背景解説–まろ屋の秋風

百人一首第71番 源経信『夕されば』背景解説–まろ屋の秋風「夕されば 門田の稲葉 訪れて 蘆のまろ屋に 秋風ぞ吹く」の情景をテーマにしたイメージの画像 百人一首

百人一首第71番 源経信『夕されば』で、

和歌の世界を旅してみませんか?

夕暮れどき、

稲の葉を揺らしながら吹き抜ける秋風。

それは、蘆ぶきのまろ屋にまで届き、

ひとときの静寂と季節の移ろい

そっと伝えます。

紫式部
紫式部

今回は、源経信みなもと の つねのぶが詠んだ一首をご紹介します。

小野小町
小野小町

自然の息づかいと素朴な暮らしが交差する秋の情景を、やさしく読み解いてみましょう。

和歌の魅力をより深く理解するために、和歌と短歌の違いを学べる記事もぜひご覧ください。また和歌の形式や表現の違いを学ぶことで、百人一首の味わいがより一層広がります。

百人一首の流れを追って楽しむことで、和歌の歴史や背景がより深く感じられます。そして前の歌をまだご覧になっていない方は、ぜひ百人一首第70番 良暹法師りょうぜんほうし『寂しさに』記事も併せてご覧ください。

生涯について

百人一首第71番 源経信『夕されば』背景解説–まろ屋の秋風「源経信」の肖像画
写真:パブリックドメイン(提供元:Wikipedia)
百人一首第71番 源経信『夕されば』背景解説–まろ屋の秋風「夕されば 門田の稲葉 訪れて 蘆のまろ屋に 秋風ぞ吹く」の情景をテーマにした和歌の画像

源経信みなもと の つねのぶ Wikipedia(1016年頃~1097年頃)は、

平安時代中期の公卿・歌人で、

村上源氏の流れをくむ名門の出身です。

また後朱雀・後冷泉・白河天皇に仕え、

和歌にも優れた才能を発揮しました。

紫式部
紫式部

また『後拾遺和歌集』などの勅撰集にたびたび入集し、宮廷の雅と自然詠の調和を得意とする作風が特徴です。

小野小町
小野小町

百人一首では、農村の素朴な情景と秋風の余韻を静かに描いた一首が選ばれ、風景と感情が融合した美しい秋の和歌として親しまれています。

歴史的イベント

源経信みなもと の つねのぶは、詩歌・管絃・有職故実に

通じた多才な文化人で、

その才能は藤原公任にも比肩すると評されました。

また長久2年(1041年)の

「祐子内親王家名所歌合」をはじめ、

多くの歌合に参加し、歌人として名を高めます。

紫式部
紫式部

しかし、同時代の歌人・藤原通俊とは政治的にも歌壇的にも対立し、『後拾遺和歌集』の選者通俊を批判して『後拾遺問答』などを著すなど、歌壇内での論争にも加わりました。

小野小町
小野小町

その情熱は、和歌への深い信念の表れでもありました。

静けさの中にこそ、響くものがある――
同時代の歌人・藤原公任による、
音のない世界に心を澄ます一首もあわせてご覧ください。

👉百人一首第55番 藤原公任『滝の音は』背景解説–音なき滝の囁き

他の歌について

源経信みなもと の つねのぶは『新古今和歌集』に、

月影のすみわたるかな天の原雲吹きはらふ夜はの嵐に

という歌を残しています。

この歌では、夜半の嵐が空の雲を吹き払うことで、

月の光が澄み渡っていく様子

壮大なスケールで詠まれています。

紫式部
紫式部

源経信は、こうした自然現象の動きと、その先に広がる静けさや光をとらえる表現を得意としていました。

小野小町
小野小町

「夕されば」の一首が農村の秋風を描いた叙景歌であるのに対し、この歌では天空を舞台にした清澄な美しさが際立ち、経信の歌風の幅広さと、自然へのまなざしの深さがよく表れています。

自然の風景と素朴な暮らしを詠んだ、

叙景歌の美しさが光る一首です。

また百人一首の中でも、

農村の静けさと秋風の余韻を細やかに描いた作品

として位置付けられ能動的な動きよりも、

自然に身をゆだねる視点が魅力とされています。

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源経信がなぜこの和歌を詠んだのか?

百人一首第71番 源経信みなもと の つねのぶ『夕されば』背景解説–まろ屋の秋風では、源経信がなぜこの和歌を詠んだのか?についてポイントを3つに分けてみました。

3つのポイント
  • 季節の訪れを肌で感じたから
  • 自然と暮らしの調和を詠みたかった
  • 素朴な風景に心を寄せたかった

季節の訪れを肌で感じたから

夕方、吹き抜ける風に秋の気配を感じ、

その瞬間を静かに歌に留めたかった。

また日常の中にある季節の移ろいへの

感受性がにじみます。

自然と暮らしの調和を詠みたかった

稲穂の実る門田や蘆ぶきの庵など、

人の営みと自然の息づかいが溶けあう風景

詠み込んでいます。

素朴な風景に心を寄せたかった

華やかな宮廷とは違う、

庶民の暮らしに吹き込む風の美しさを、

静かなまなざしで描こうとした一首です。

紫式部
紫式部

この和歌では、都の喧騒から離れた農村の一場面を通して、自然の気配と人の暮らしが共鳴する瞬間を描いています。

小野小町
小野小町

また経信は公家でありながら、こうした素朴な情景に美を見いだし、それを歌に昇華させる感受性を持っていました。

門田に吹く秋風がまろ屋に届く――その静かな時間の流れを、ありのままに受けとめる心が詠まれているのです。

読み方と句意

百人一首第71番 源経信『夕されば』背景解説–まろ屋の秋風「夕されば 門田の稲葉 訪れて 蘆のまろ屋に 秋風ぞ吹く」の情景をテーマにした和歌とイメージの画像
百人一首第71番 源経信『夕されば』背景解説–まろ屋の秋風「夕されば 門田の稲葉 訪れて 蘆のまろ屋に 秋風ぞ吹く」の情景をテーマにした和歌の画像

百人一首第71番 源経信|大納言経信みなもと の つねのぶ|だいなごん つねのぶ ※百人一首では大納言経信

歌:夕されば 門田の稲葉 訪れて 蘆のまろ屋に 秋風ぞ吹く

読み:ゆふされば かどたのいなば おとづれて あしのまろやに あきかぜぞふく

句意:この和歌では、夕方になると秋風が門田の稲葉を揺らし、蘆ぶきの粗末な家にもそっと吹き込んでくる様子が詠まれています。

「まろ屋の秋風」――いまの私たちなら、どう感じるのだろう?

何気ない場所にも、季節は確かにやってくる。音もなく吹き抜ける風が、心の奥の静けさをそっと揺らすように、まろ屋に届いた秋風は、日常の中にある詩情を私たちに思い出させてくれます。

3つのポイント
  • 静けさの中にある贅沢
  • 自然は誰にも平等に訪れる
  • 季節が心にそっと寄り添うとき

静けさの中にある贅沢

まろ屋とは、

贅沢とはほど遠い簡素な住まい。

けれど、そこに吹く風が

もたらす穏やかな時間には、

お金では得られない心の豊かさが宿っています。

また現代でも、何もない場所でこそ

見えてくる大切なものがあります。

この和歌では、そんな“静けさの贅沢”

教えてくれます。

都会の喧騒を離れ、ふと感じる風の気配。それだけで、心がほどける瞬間があります。

自然は誰にも平等に訪れる

風はどこにでも届きます。

それは、社会的な地位や

暮らしの豊かさとは関係のないもの。

源経信みなもと の つねのぶが詠んだ「まろ屋の秋風」では、

自然の美しさが誰にでも与えられること

思い出させてくれます。

そしてほんの少し風を感じるだけで、

心がほぐれることもあるのです。

庶民の住まいにも、都の御殿にも、秋風は分け隔てなく吹いてくる――その優しさに気づくとき。

季節が心にそっと寄り添うとき

秋風の音や匂いは、何か大切なことを

思い出させてくれる力があります。

また日々の慌ただしさに追われているときこそ、

ふと吹いた風が、心を原点に戻してくれること

があるのです。

「まろ屋の秋風」では、

そんな風に寄り添う季節の記憶を、

やさしく呼び起こしてくれる一首です。

忙しさの中で忘れていた季節の匂いや音。風が吹いた瞬間、思い出す感情があります。

百人一首第71番 源経信『夕されば』の楽しみ方

百人一首第71番 源経信みなもと の つねのぶ『夕されば』背景解説–まろ屋の秋風では、この和歌の楽しみ方のポイントをこの3つに分けてみました。

3つのポイント
  • 視覚と聴覚で味わう
  • 秋の季語を味わう
  • 素朴な暮らしに寄り添う

視覚と聴覚で味わう

この和歌は、目に見える情景だけでなく、

稲がそよぐ音や風の感触までも感じられる

臨場感があります。

また「門田」「稲葉」「秋風」といった語が、

五感に訴えかけるような感性を誘い、

そして静かながらも豊かな自然の表情を

楽しめる一首です。

稲葉が風に揺れ、音を立てる様子や、まろ屋に吹き込む秋風の気配を、目と耳で感じるように味わえます

秋の季語を味わう

この一首には、

秋を象徴する季語が巧みに配置されています。

「夕されば」からは暮れゆく空の色、

「稲葉」からは実りと音、

「秋風」からは涼しさと切なさが感じられ、

秋という季節の立体感を詩として

味わえるのが魅力です。

「夕」「稲葉」「秋風」という秋の季語が、季節の深まりと暮らしの空気感を丁寧に伝えています。

素朴な暮らしに寄り添う

「蘆のまろ屋」は、身分の高くない人の住まい。

またそんな場所に吹き込む秋風を

美として詠んだこの和歌は、

豪華さではなく、素朴な日常にこそ詩情が宿る

という価値観を教えてくれます。

そして地味な情景のなかに見出される美が、

読み手の心にもやさしく寄り添います。

まろ屋という簡素な住まいに、風が訪れるという情景に、静かな美しさと共感を覚えます。

百人一首第71番 源経信『夕されば』背景解説

上の句「夕されば 門田の稲葉 訪れて」では、

日が暮れるころ、風が田のほとりを通り抜け、

実りの稲葉をそよがせながらやってくる情景を

描いています。

秋の訪れを静かに告げる自然の動きが、

繊細な感性で捉えられています。

五音句の情景と意味「夕されば」

百人一首第71番 源経信『夕されば』背景解説–まろ屋の秋風「夕されば 門田の稲葉 訪れて 蘆のまろ屋に 秋風ぞ吹く」の情景をテーマにしたイメージの画像
百人一首第71番 源経信『夕されば』背景解説–まろ屋の秋風「夕されば 門田の稲葉 訪れて 蘆のまろ屋に 秋風ぞ吹く」の情景をテーマにした和歌の画像

「夕されば」では、日が沈みかけ、空が薄紅に染まるころ。静けさが少しずつ辺りに広がる時間帯を表しています。

七音句の情景と意味「門田の稲葉」

百人一首第71番 源経信『夕されば』背景解説–まろ屋の秋風「夕されば 門田の稲葉 訪れて 蘆のまろ屋に 秋風ぞ吹く」の情景をテーマにしたイメージの画像
百人一首第71番 源経信『夕されば』背景解説–まろ屋の秋風「夕されば 門田の稲葉 訪れて 蘆のまろ屋に 秋風ぞ吹く」の情景をテーマにした和歌の画像

「門田の稲葉」では、農家の門のそばに広がる稲田。実りの葉が風にそよぎ、秋の気配が漂います。

五音句の情景と意味「訪れて」

百人一首第71番 源経信『夕されば』背景解説–まろ屋の秋風「夕されば 門田の稲葉 訪れて 蘆のまろ屋に 秋風ぞ吹く」の情景をテーマにしたイメージの画像
百人一首第71番 源経信『夕されば』背景解説–まろ屋の秋風「夕されば 門田の稲葉 訪れて 蘆のまろ屋に 秋風ぞ吹く」の情景をテーマにした和歌の画像

「訪れて」では、風がふとやってきて、稲を揺らし、まろ屋へと向かう、目に見えぬ訪問者のように描かれます。

下の句(7-7)分析

下の句「蘆のまろ屋に 秋風ぞ吹く」では、

簡素な庵にまで届く秋風の気配を

詠んでいます。

人里離れた静かな暮らしにも、

季節の風は平等に訪れる

またそのやさしい視線と、

秋の深まりを伝える風の余韻が、

この一首に静かな美しさを与えています。

七音句の情景と意味「蘆のまろ屋に」

百人一首第71番 源経信『夕されば』背景解説–まろ屋の秋風「夕されば 門田の稲葉 訪れて 蘆のまろ屋に 秋風ぞ吹く」の情景をテーマにしたイメージの画像
百人一首第71番 源経信『夕されば』背景解説–まろ屋の秋風「夕されば 門田の稲葉 訪れて 蘆のまろ屋に 秋風ぞ吹く」の情景をテーマにした和歌の画像

「蘆のまろ屋に」では、蘆で葺かれた簡素な庵に、静けさと慎ましさが漂う暮らしの風景が映ります。

七音句の情景と意味「秋風ぞ吹く」

百人一首第71番 源経信『夕されば』背景解説–まろ屋の秋風「夕されば 門田の稲葉 訪れて 蘆のまろ屋に 秋風ぞ吹く」の情景をテーマにしたイメージの画像
百人一首第71番 源経信『夕されば』背景解説–まろ屋の秋風「夕されば 門田の稲葉 訪れて 蘆のまろ屋に 秋風ぞ吹く」の情景をテーマにした和歌の画像

「秋風ぞ吹く」では、涼やかで物寂しい秋風が、季節の深まりをそっと伝えるように吹き抜けます

百人一首第71番 源経信『夕されば』和歌全体の情景

百人一首第71番 源経信『夕されば』背景解説–まろ屋の秋風「夕されば 門田の稲葉 訪れて 蘆のまろ屋に 秋風ぞ吹く」の情景をテーマにした和歌とイメージの画像
百人一首第71番 源経信『夕されば』背景解説–まろ屋の秋風「夕されば 門田の稲葉 訪れて 蘆のまろ屋に 秋風ぞ吹く」の情景をテーマにした和歌の画像

夕暮れ時、稲葉を揺らす秋風がそよそよと吹き、やがて蘆ぶきのまろ屋に届く。素朴な農村の風景の中に、季節の移ろいと静かな生活の息づかいが感じられます。また自然のやさしい訪れと、それを受け入れる庵の静けさが、美しく調和した情景です。

百人一首第71番 源経信『夕されば』まとめ

この和歌は、

夕暮れに吹く秋風が門田の稲葉を揺らし、

蘆ぶきのまろ屋に届くまでの

静かな情景を詠んでいます。

また華やかさを避け、

素朴な暮らしと自然のやさしい呼吸を

そのまま歌にした一首です。

そして風が吹くというだけの出来事が、

ここでは心を包み込む詩情に変わります。

紫式部
紫式部

源経信の繊細なまなざしが、平凡な風景の中にある豊かさをそっと教えてくれる、秋の名歌です。

小野小町
小野小町

百人一首第71番 源経信みなもと の つねのぶ『夕されば』背景解説–まろ屋の秋風を百人一首の第一歩として、この和歌を味わうことで、和歌の魅力を発見してみてください。

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