百人一首第78番 源兼昌『淡路島』で、
和歌の世界を旅してみませんか?
淡路島から渡ってくる千鳥の鳴き声に、
須磨の関守は夜ごと目を覚ます――。

源兼昌の一首は、孤独と哀愁に満ちた冬の浜辺の情景を見事に描いています。
遠くから響く鳥の声が、静けさの中で心に沁みる。

平安の夜を包むその寂寥の美を、あなたも感じてみましょう。
和歌の魅力をより深く理解するために、和歌と短歌の違いを学べる記事もぜひご覧ください。また和歌の形式や表現の違いを学ぶことで、百人一首の味わいがより一層広がります。
百人一首の流れを追って楽しむことで、和歌の歴史や背景がより深く感じられます。そして前の歌をまだご覧になっていない方は、ぜひ百人一首第77番 崇徳天皇『瀬をはやみ』記事も併せてご覧ください。
源兼昌の生涯と百人一首の背景
生涯について


平安時代後期の歌人で、
左少弁・源俊房の子孫と伝わります。
また官人として朝廷に仕えながら、
和歌にも優れ、勅撰和歌集『金葉和歌集』
『詞花和歌集』などに入集しています。

そして彼の作風は、穏やかな情感と繊細な自然描写が特徴で、情景と心情を静かに重ねる表現に定評がありました。

百人一首に選ばれた「淡路島」の一首は、孤独な関守の心に寄り添うような静かな哀愁を描き、平安後期の叙情歌として高く評価されています。
歴史的イベント
源兼昌は、平安時代後期に活躍した
官人であり歌人です。
永承年間(1046~1053)頃には
すでに歌壇に名を知られ、
「内裏歌合」などの宮中行事に参加しました。
また『金葉和歌集』『詞花和歌集』に
計5首が入集しており、
自然と人の感情を穏やかに
結びつけた作風で知られます。

そして政治的には目立つ地位に就くことはなかったものの、静かな抒情と繊細な風景描写で平安後期の和歌に一つの美学を築きました。

百人一首に収められた「淡路島」の一首は、その代表的作品とされています。
他の歌について
源兼昌は『新勅撰和歌集』に、
「夕づく日いるさの山の高嶺よりはるかにめぐる初時雨かな」
という歌を残しています。
この歌は、夕日に照らされた入佐山の高嶺から、
初時雨がはるかにめぐり降る情景を詠んだ一首です。
また夕暮れの光と雨の対比が美しく、
自然の移ろいを繊細にとらえた兼昌の感性が光ります。

彼の歌には、激しい感情ではなく、静かな哀愁や柔らかな情緒が流れています。

百人一首の「淡路島」が夜の海に響く千鳥の声を描いたのに対し、この歌は光と雨の儚さを描き、時と自然のうつろいを感じさせる叙景歌として高く評価されています。
百人一首第78番 源兼昌『淡路島』の百人一首における位置付け
この和歌は、淡路島から渡る千鳥の声に
眠れぬ須磨の関守の寂しさを詠んだ一首です。
百人一首では、孤独と静寂の情景を通して
人の哀感を映し出した叙情歌として位置付けられ、
平安後期の風流と感受性をよく伝えています。
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源兼昌がなぜこの和歌を詠んだのか?
百人一首第78番 源兼昌『淡路島』背景解説–声に眠れずでは、源兼昌がなぜこの和歌を詠んだのか?についてポイントを3つに分けてみました。
- 孤独な夜を詠むため
- 自然に心を重ねるため
- 人の情を伝えるため
孤独な夜を詠むため
須磨の関守という孤高の立場から、
夜の静寂に響く千鳥の声が
心の寂しさを呼び起こす情景を描いています。
自然に心を重ねるため
淡路島から渡る千鳥の声を聞きながら、
人の心と自然が共鳴する
繊細な感情表現を試みました。
人の情を伝えるため
遠く離れた地で、
人恋しさや世の哀れを穏やかに
伝える和歌の本質を表現しています。

この和歌では、淡路島と須磨の海を隔てる夜の情景を通して、孤独と郷愁を詠み上げています。

また千鳥の鳴き声は、ただの自然描写ではなく、人の心の寂しさを映す象徴です。
源兼昌は、自然の音に人の感情を重ねることで、静けさの中に潜む人間の哀しみと優しさを表現しました。
読み方と句意


百人一首第 源兼昌
歌:淡路島 通ふ千鳥の 鳴く声に 幾夜寝覚めぬ 須磨の関守
読み:あはぢしま かよふちどりの なくこゑに いくよねざめぬ すまのせきもり
句意:この和歌では、淡路島から渡ってくる千鳥の鳴き声に、寂しさが募り、須磨の関守は幾夜も眠れずに過ごしたという情景を詠まれています。
「声に眠れず」――いまの私たちなら、どう感じるのだろう?
夜の静けさの中で思い出す声。心に残る言葉や記憶が、眠りを遠ざけることがあります。寂しさ、懐かしさ、そして誰かを想う気持ち――。源兼昌の一首は、今を生きる私たちにも寄り添います。
- 心に残る声を思う夜
- 孤独を感じる時間
- 自然と心の共鳴
心に残る声を思う夜
夜の静寂は、人の心を素直に映し出します。
また誰かの声や、かつての出来事を思い出し、
眠れなくなることがあります。
また兼昌の「千鳥の声」は、
人の声や思い出の象徴。
そして現代でも変わらない
「心のざわめき」として共感を呼びます。
眠れぬ夜、ふと聞こえる記憶の声が心を揺らします。
孤独を感じる時間
須磨の関守のように、
一人の夜を過ごすとき、
人は孤独を強く感じます。
しかしその孤独は、
心を深める時間でもあります。
また静寂の中で聞こえる“自分の声”に耳を傾けることで、
心が少しずつ整理されていきます。
静けさの中で自分と向き合うとき、孤独の存在に気づきます。
自然と心の共鳴
淡路島から届く千鳥の声のように、
自然の音は心を揺らす力を持っています。
また悲しみだけでなく、
懐かしさや希望も運んできます。
そして自然と人の心が響き合う瞬間を感じ取ることが、
この和歌の深い魅力です。
夜の音や風に、自分の感情を重ねる瞬間があります。
百人一首第78番 源兼昌『淡路島』の楽しみ方
百人一首第78番 源兼昌『淡路島』背景解説–声に眠れずでは、この和歌の楽しみ方のポイントをこの3つに分けてみました。
- 音の情景を想像する
- 孤独と静寂を味わう
- 自然と心の調和を読む
音の情景を想像する
「淡路島 通ふ千鳥の 鳴く声に」
という表現からは、
海風に乗って渡る鳥の声と波の音が
聞こえてきます。
また耳で聴くように読むことで、
静けさと寂しさが
溶け合う平安の夜を体感できます。
そして音を感じ取ることが、
この歌の最大の魅力です。
千鳥の鳴き声が響く夜の海を思い浮かべながら読むと、情景が一層深く感じられます。
孤独と静寂を味わう
夜ごと鳴く千鳥の声に目を覚ます関守の姿は、
孤独の象徴であると同時に、
静寂の美を讃える情景でもあります。
また人の寂しさを否定せず、そこに情緒を見出す――
それが平安の美意識であり、
この和歌の醍醐味です。
須磨の関守の心に寄り添い、孤独の中にある美しさを感じてみましょう。
自然と心の調和を読む
淡路島の海と須磨の浜を
隔てて響く千鳥の声は、
自然と人の心が共鳴する象徴です。
また自然描写に感情を託すことで、
直接的な表現よりも深い余韻が生まれます。
そこに、和歌ならではの“静かな感動”を
見つけられるでしょう。
自然の情景と人の感情が重なり合う瞬間を味わうことができます。
百人一首第78番 源兼昌『淡路島』背景解説
上の句(5-7-5)
上の句「淡路島 通ふ千鳥の 鳴く声に」では、
海を隔てた淡路島から渡ってくる千鳥の声が、
須磨の浜に響く夜の情景を描いています。
また海風に乗る鳴き声が静けさを破り、
孤独な夜をいっそう深める叙情的な導入部です。
五音句の情景と意味「淡路島」


「淡路島」では、静かな海の向こうに浮かぶ島。また遠く離れた場所への思慕や郷愁を感じさせる情景です。
七音句の情景と意味「通ふ千鳥の」


「通ふ千鳥の」では、島から浜へ渡ってくる千鳥の群れが、夜の海を行き交う切なさを映しています。
五音句の情景と意味「鳴く声に」


「鳴く声に」では、波間に響く鳥の声が、孤独な夜を静かに揺らす音の情景を描いています。
下の句(7-7)分析
下の句「幾夜寝覚めぬ 須磨の関守」では、
海辺の関を守る孤独な男が、
千鳥の鳴き声に夜ごと目を覚ます姿を描いています。
また静寂と孤独の中に響く鳥の声が、
心の寂しさをより深く浮かび上がらせる叙情的な結句です。
七音句の情景と意味「幾夜寝覚めぬ」


「幾夜寝覚めぬ」では、千鳥の声に幾度も目を覚まし、眠れぬ夜を重ねる孤独な心情を映しています。
七音句の情景と意味「須磨の関守」


「須磨の関守」では、人影のない海辺で関を守る男。また潮騒と鳥の声に寄り添う静かな孤独が描かれています。
百人一首第78番 源兼昌『淡路島』和歌全体の情景


淡路島から渡ってくる千鳥の鳴き声が、須磨の浜辺に響く夜。関を守る男はその声に眠れぬまま、幾夜も過ごしている。そして海を隔てた静かな情景の中に、孤独と哀愁が溶け合い、冬の夜の寂寞をしみじみと感じさせる一首です。
百人一首第78番 源兼昌『淡路島』まとめ
この和歌では、
淡路島から渡る千鳥の鳴き声を通して、
孤独と哀愁に包まれた須磨の関守の
心を描いています。
また夜の静けさに響く鳥の声が、
人の寂しさや郷愁を静かに呼び覚ます
叙情的な一首です。
そして兼昌は、自然の音を通じて心情を表す
という平安和歌の美学を見事に体現しました。

海と空の間に漂う声の余韻が、人の心に寄り添うように響き続ける――そんな静かな感動を伝える作品です。

百人一首第78番 源兼昌『淡路島』背景解説–声に眠れずを百人一首の第一歩として、この和歌を味わうことで、和歌の魅力を発見してみてください。